戦争と暮らし、今に重ねて 宮前の小池さんが中原で写真展 1930年代から現代まで  

2020年10月4日 07時19分

保管する膨大なフィルムに目を通す小池汪さん=宮前区で

 長年、戦争の傷痕を撮影している川崎市宮前区在住の写真家・小池汪(おう)さん(87)が主催する写真展「戦争暮らし」が7日から、中原区の市平和館で始まる。70年近くに及ぶカメラマン人生で撮りためた膨大な写真から、日常の悲劇に焦点を当てた作品を厳選した。小池さんは「戦争を今につなげて考えられるよう暮らしの視点でとらえた。市民に見てもらいたい」と訴えている。
 (山本哲正)

後に特攻隊員となった上原良司さん(右から3人目)の家族写真。男兄弟は皆戦死した

 小池さんは一九三三年に東京・世田谷で生まれ、幼少期に川崎市に転居。戦後、写真界の巨匠・故土門拳さんに師事し、数々のルポルタージュ作品を手がけてきた。地元川崎を記録した「川崎50年」などの作品もある。
 戦時下の川崎で、「艦載機による機銃掃射の中を防空ずきんをかぶって逃げまどい、芋用の穴に入って震えていた」という戦争体験が原点にあり、ライフワークとして「暮らしの中の戦争」を記録してきた。
 旧日本陸軍の研究施設「登戸研究所」(多摩区)や「日吉台地下壕(ごう)」(横浜市港北区)などについて調べる市民グループにも積極的に参加し、撮影などで協力してきた。
 今回の写真展では、大小さまざまなカメラで撮影し35ミリフィルムだけでも三千本以上に及ぶ作品の中から、約百五十点を厳選し、デジタル処理など半年がかりで準備してきたという。「戦争体験者として今、戦争の臭いが気になってしかたない。一貫して平和を願う視点で撮り続けてきた写真家の、私の遺言のつもりだ」と語った。

上原家の仏壇。戦死した3人兄弟の胸像が並ぶ

 資料写真も加え撮影時期は一九三〇年代から現代までと幅広く、一挙にまとめるのは今回が初めて。「『戦地』だけではなく、『銃後』の国内でも戦争は暮らしと密接に交錯する」との思いで構成したという。
 「特別攻撃隊」をテーマにした写真では、「きけ わだつみのこえ」でも知られる上原良司さん(一九二二〜四五年)の遺族を九八年ごろ長野県に訪ね、上原さんらいずれも戦死した三兄弟の胸像が並ぶ仏壇や、上原さんの遺書などを撮影。上原さんが笑顔で写っている家族写真も接写し、残された家族の癒えない痛みを伝えている。
 「日吉台地下壕」では、旧連合艦隊司令部が置かれた壕の中の水洗トイレを撮影、旧海軍司令官たちの快適な暮らしを切り取った。「731部隊」(旧関東軍防疫給水部)のテーマでは、婚約者を奪われたという中国人女性の写真などを紹介。戦後に現地を訪れ、顔をゆがめて話す女性の悲しみを記録した。フェンスで隔てられた「横須賀基地」や沖縄の米軍基地の写真も並べる。

登戸研究所。白衣と白いゴム長靴の隊員の姿もある

 登戸研究所保存の会や川崎公害病患者と家族の会、京浜協同劇団など小池さんと付き合いの長い近隣の団体が協賛。会場設営などを手弁当で協力する。
 小池さんは「地元で多くの人に見てもらいたい」と話した。
<写真展「戦後75年 戦争暮らし」> 7〜30日(月曜と20日休館)、午前9時〜午後5時、中原区木月住吉町の市平和館で開催。来場者に絵はがき1枚を贈呈。
 11日以降の土日の午後2時〜同4時に、「登戸と地域」などをテーマに多彩なゲストによるフロアトークを予定(事前申し込みが必要)。最終回の「写真を語る」は小池汪さんが登壇。問い合わせはメール=2020sengura@gmail.com=で。

フェンス越しに広々と広がる沖縄の空。フェンスの編み目の向こうに、小さくヘリコプターが見える=いずれも小池汪さん提供


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