温暖化で揺れる「脱原発」 温室効果ガス削減へ「もっと再生可能エネに注力を」

2020年10月5日 06時00分

仏西部スラックシュルメールで9月、海が目の前に迫った元低所得者支援施設

<揺れる原発大国 フランスはいま(下)>
 フランス西部の海辺の町スラックシュルメール。廃虚となった低所得者支援施設の足元に海が迫る。海面上昇で海岸の土砂が流され、安全上の理由で6年前から立ち入り禁止となった。
 「以前は海岸に砂丘が連なり、海がほとんど見えなかった」。近くのカジノで管理責任者を務めるニコラ・エクセランスさん(38)は振り返る。海岸線は60年間で300メートル後退。幼少期から付近の海岸をたびたび訪れている自営業パトリック・ゴンザレスさん(57)は「温暖化の影響は明らか」と危機感を示した。

◆温暖化で原発推進派は攻勢

 欧州投資銀行の2019年の調査によると、仏国民の83%が「日常生活で温暖化の影響を感じる」と回答。近年、国内は猛暑で最高気温が40度を超え、温室効果ガスを出さない原発を再評価する声が環境団体の中からさえ出ている。
 仏政府が15年に原発依存の引き下げを表明して以来、守勢に立たされてきた電力業界は好機とばかりに攻勢に出た。フランス電力(EDF)は「二酸化炭素を出さないクリーンな電力」と訴え、「低炭素社会で不可欠なパートナー」と強調する。休暇でスラックシュルメールの海岸を訪れたジャンマルク・オリベさん(70)も「温暖化が進む状況で原発は現実的な選択肢」と理解を示した。

◆増え続ける「核のごみ」、高まるコスト

 こうした声に、反原発の仏国際非政府組織(NGO)「ラミ・ド・ラ・テール」の広報担当セシル・マルシャンさん(25)は「原発の悪影響があまりにも軽視されている」と懸念を示す。
 仏国内の原発が生み出す使用済み燃料は年間1150トン。将来の再利用を見込み再処理もするが、長ければ数千年も管理が必要な「核のごみ」は増える一方だ。保管場所が満杯に近づきつつあるとの指摘もある。事故や故障が830件以上起きた年もあった。キュリー夫妻ら著名科学者を輩出した国として、国民の科学信仰は強いものの、完全制御とは言い難い。
 仏政府は燃料をリサイクルできる高速実証炉の計画を06年から進めてきたが開発は難航し、費用高騰を理由に19年、断念。代わりにテロや航空機墜落に対応できる強靱な新型原発の建設を仏北西部フラマンビルで進める。しかし12年の完成予定は10年以上延び、こちらも建設費は当初予定の33億ユーロ(約4073億円)から124億ユーロに跳ね上がった。
 仏政府や電力業界による「原発の電力は安い」との主張は揺らいでいる。今年6月に公表された仏会計検査院の報告書によると、1メガワット時の発電に必要な費用は、風力が62~112ユーロ。フラマンビルの新型原発は120ユーロ程度と予想される。仏原子力専門家のイブ・マリニャック氏は「核のごみなど課題を踏まえ、仏企業自身が徐々に原発依存から方向転換を考えつつある」と指摘した。
◆浸食進む海岸の町「原発にかける力は…」
 スラックシュルメールの海岸では、海岸に砂を投入して浸食を押しとどめている。ゴンザレスさんは言う。「問題は温暖化だけじゃない。フクシマや仏国内を見れば、事故の防止や増え続ける核のごみの管理は不可能に思える。原発にかける力を、もっと再生可能エネルギーの開発に注ぐべきだ」(スラックシュルメールで、竹田佳彦、写真も)

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