認知症をカードで笑顔に 法政大生が開発、同級生の言葉がきっかけ

2020年10月5日 17時00分
祖母(右)と懐話ふだで遊ぶ木村光希さん=本人提供

祖母(右)と懐話ふだで遊ぶ木村光希さん=本人提供

  • 祖母(右)と懐話ふだで遊ぶ木村光希さん=本人提供
  • 法政大の学生チームが考案した懐話ふだ。時代カード(上)と思い出カード(下)を一枚ずつめくって語り合うテーマを決める
  • かつしか認知症啓発カードの一例。行動からは読み取れない患者本人の気持ちを裏面で解説している
 「私のおばあちゃん認知症なんだよね」。同級生がつぶやいた一言をきっかけに、法政大の学生チームが認知症患者との交流に使えるカードゲームを考案した。東京都葛飾区も啓発カードを独自に開発。親しみやすい手法で、若い世代に認知症への理解を深めてもらおうとする動きが広がっている。(加藤健太)

◆語り合うきっかけに

 法政大の学生3人は、認知症のリハビリの1つで、思い出話を語ることで脳の活性化を狙う「回想法」に目を付けた。お年寄りと孫世代が語り合うきっかけになればとカードゲームを思い付き、会話をもじって「懐話ふだ」と名付けた。
 複数で遊ぶことを想定しており、テーマは「学生時代」「ここ最近」などと書かれた4種類の時代カードと、「笑ったこと」「好きだった人」などの12種類の思い出カードを1枚ずつめくって決める。お年寄り向けに文字を大きく、イラストはシンプルにした。
 冒頭の一言をつぶやいたのはメンバーの1人、経営学部4年の木村光希さん(22)。同居する祖母(90)は軽い認知症を患っているが、懐話ふだで遊んでみると、学生時代に走り高跳びを頑張った思い出を楽しそうに話してくれた。「きのう食べたものを思い出せない日があるのに、昔の記憶を鮮明に語っていて驚いた」と振り返る。

◆ネットで販売、11月をめどに

 学生チームは大阪の印刷会社の協力で、懐話ふだの製作を開始。試作品を高齢者施設に持ち込み、実際に会話が盛り上がったテーマに絞って商品化した。価格は2500円前後を予定し、11月をめどにアマゾンなどでネット販売する。
 メンバーは「昔のことはどうせ覚えていないだろうからと、これまで聞いてこなかったのを反省している。会話の機会が生まれるように若い世代にも届けたい」と力を込めた。

◆葛飾区は「患者の気持ちを理解する」カード

 葛飾区が製作したのは、はがき大の「かつしか認知症啓発カード」。急に怒りだしたりする行動の裏で、患者本人がどういう気持ちになっているかを解説し、対応や声掛けに役立ててもらう狙いがある。
 カードの表面で「家の中をうろうろする」「家族を泥棒呼ばわりする」などの場面を取り上げ、裏面で「やることが次々に頭に浮かんで落ち着かない」「物をしまった場所を忘れてしまっている」と解説している。
 監修した認知症予防専門医の稲葉敏さんは「今までできていたことができなくなって一番困惑しているのは患者本人なので、一方的に行動をとがめると症状が悪化してしまう。患者の気持ちを理解して接すれば症状の進行を和らげられる」と指摘する。
 6月の発売後、区の予想を上回る約160個が売れており、区は若い世代に向けた啓発イベントでも活用していく。1セット35枚。区役所で300円で販売している。

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