政府、任命拒否可とする内部文書を18年に作成 国民には説明せず

2020年10月6日 23時00分

日本学術会議の会員任命に関する内閣府作成の文書。首相には学術会議の推薦通りに「任命すべき義務があるとまでは言えない」と示している

 日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題を巡り、政府は6日、行政権や公務員任命権を定めた憲法の条文を根拠として、首相が学術会議の推薦通りに任命する義務はないと確認した2018年11月の内部文書を公表した。1983年の国会答弁で首相の任命権について「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否はしない。形だけの任命をしていく」とした政府見解と食い違う対応の変更を国民に説明せず行っていたことが明らかになった。

◆官房長官「直ちに公表の必要なく」

 加藤勝信官房長官は6日の記者会見で、法解釈の変更はなく、過去の国会答弁とも齟齬がないとの認識を強調。文書をこれまで公開しなかった理由について「解釈に変更を加えたものではないので、直ちに公表する必要はなかった」と主張した。
 政府側が立憲民主などの野党の会合で示した文書は、18年11月13日付で内閣府日本学術会議事務局が作成したとしている。日本学術会議法で、学術会議が会員の候補者を選考して首相に推薦し、推薦に基づいて首相が任命すると規定していることを踏まえ、首相が推薦通りに会員を任命する義務があるかを検討した。
 憲法65条の「行政権は内閣に属する」と憲法72条の「内閣総理大臣は行政各部を指揮監督する」の趣旨から「首相は会員の任命権者として、人事を通じて一定の監督権を行使することができる」と解釈。憲法15条の「公務員の選定、罷免は国民固有の権利」を引いて「首相が任命について国民、国会に責任を負えるものでなければならないことからすれば、首相に推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない」と結論付けた。
 首相の任命権を適切に行使するために「任命すべき会員の数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命することも否定されない」とも記載した。首相の任命権を「形式的」とした国会答弁との整合性に関しては、注釈で「会員の任命は『形式的任命』と言われることもあるが、下級裁判所の裁判官の任命や、大学の学長の任命とは同視することはできない」と指摘。司法権の独立や、学問の自由を守るため大学の自治を憲法が保障しているのとは異なり、国の行政機関である学術会議の人事に関与することは認められるという論理を展開している。(生島章弘、木谷孝洋)
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◆内閣府2018年11月作成文書の要旨
 日本学術会議の人事に関し、内閣府が2018年11月に作成した文書「日本学術会議法第17条による推薦と内閣総理大臣による会員の任命との関係について」の要旨は次の通り。
 【学術会議の設立趣旨】
 学術会議は、科学に関する重要事項の審議および研究の連絡に関する事務を所掌し、政府からの諮問に対する答申、政府への勧告等を行う国の行政機関として設置。現在は「特別の機関」として内閣府に置かれている。
 【会員選出方法】
 学術会議は、210人の特別職の国家公務員たる会員で組織され、日本学術会議法17条の規定による推薦に基づき、首相が会員を任命する。任期は6年で、3年ごとにその半数を任命している。
 【首相の任命権】
 首相は(学術会議に)推薦されていない者を任命することはできない。その上で、同法17条による推薦の通りに首相が会員を任命すべき義務があるかどうかについて検討する。
 学術会議が首相の所轄下の国の行政機関であり、憲法65条、72条の規定に照らし、首相は、会員の任命権者として、学術会議に人事を通じて一定の監督権を行使することができる。
 憲法15条第1項の規定で明らかにされている公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理からすれば、任命権者の首相が、会員の任命について国民および国会に対して責任を負えるものでなければならない。首相に学術会議の推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない。
 (※)首相による会員の任命は、推薦を前提とするものであることから「形式的任命」と言われることもあるが、国の行政機関に属する国家公務員の任命であることから、憲法23条に規定された学問の自由を保障するために大学の自治が認められているところでの文部科学相による大学の学長の任命とは同視できない。
 首相は任命に当たり、学術会議からの推薦を十分に尊重する必要がある。任命すべき会員を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命することも否定されない(学術会議に保障された職務の独立を侵害するものではない)と考えられる。

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