米国の大学、講義再開を急ぎ集団感染 経営難にコロナ減少が追い打ち キャンパスや寮で「3密」

2020年10月7日 11時55分
8月半ば、今春以降初めて開講したアラバマ大学に併設されたバーには、多くの学生が集まった。同大では講義開始後、1000人以上の新型コロナウイルス感染が確認されたとされる=AP

8月半ば、今春以降初めて開講したアラバマ大学に併設されたバーには、多くの学生が集まった。同大では講義開始後、1000人以上の新型コロナウイルス感染が確認されたとされる=AP

  • 8月半ば、今春以降初めて開講したアラバマ大学に併設されたバーには、多くの学生が集まった。同大では講義開始後、1000人以上の新型コロナウイルス感染が確認されたとされる=AP
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない米国で、流行の中心地の一つになっているのが各地の大学だ。「閉鎖後の講義再開で戻ってきた若者たちがパーティーなどで騒いでいる」との批判も強いが、大学側が再開を急いだ背景には、以前から続く経営難にコロナによる減収が追い打ちをかけた構図も見えてくる。(ニューヨーク・杉藤貴浩)
 「友達の部屋に数人で集まって遊んでいたら感染してしまった。その場にいた全員も」。米西部カリフォルニア州の南カリフォルニア大に通う女子学生は9月、新型コロナ感染による2週間の隔離を終えた後、明らかにした。体調に大きな問題はないが「感染者は知人だけで30人以上」と話す。
 感染者約745万人、死者約21万人でいずれも世界最多の米国。状況の悪化に拍車をかけたのが、大学生ら若者の感染だ。
 南カリフォルニア大は対面講義再開の準備を進めていたが、実家などから戻ってきた学生らの感染が急増し、100人以上を隔離措置とした。米メディアによると、南部アラバマ州のアラバマ大では講義再開後に千人以上の感染が発覚するなど、夏以降に大規模な学内感染が相次いでいる。
 ネットには学生らがマスクも着けずに大人数で騒ぐ動画などが拡散。「自分は平気でも、家に帰って高齢者らに感染を広めたらどうするんだ」などと批判が集まっている。
 ただ、感染拡大の根本原因は、対面講義の再開がキャンパスや寮で「3密」になりやすい環境を生んだことだ。
 再開を決めた大学は、表向きの理由として教師と学生が生でやりとりする重要性を訴えるが、東部ニューヨーク州コロンビア大のジェニー・デイビッドソン教授(49)は「判断にはコロナによる財政への深刻な打撃が影響した」と話す。
 米シンクタンクによると、2008年のリーマン・ショックを機に、各州は州立大などへの補助金を削減。学生1人あたりの補助額は18年までに、それまでより16%減少した。多くの大学が授業料や運営する寮などの収入に依存しており、「コロナでの閉鎖による減収は前例のない試練だっただろう」とデイビッドソン氏は話す。
 コロンビア大は対面を再開していないものの、大学病院がコロナ対策として緊急性の低い他の疾患の手術を停止するなどしたため、医療収入も急減している。
 コロナが終息しない状況下で「なぜ再開したのか」との声は学生側にも強い。
 一部の対面講義を再開した後に感染が拡大したニューヨーク州立大オニオンタ校に通うアドリアーナ・ニューウェルさん(21)は「オニオンタの街は小さく、経済的に大学に頼っている。収入を回復したい大学と利害が一致したのかもしれないが、学生を通じて街に感染が広がれば、両者の関係が悪くなるだけだ」と批判している。

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