MOX燃料工場が新基準「適合」 核燃料サイクル停滞、問われる意義

2020年10月8日 05時50分
 原子力規制委員会は7日の定例会合で、日本原燃のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料加工工場(青森県六ケ所村)の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承した。事実上の審査適合。今後、一般からの意見公募などを経て正式適合となる。
 MOX工場は、原発の使用済み核燃料を化学処理(再処理)してプルトニウムやウランを取り出し、燃料として繰り返し使う国策「核燃料サイクル」の関連施設。7月に審査に適合した再処理工場で作ったMOX粉末を、一般の原発での「プルサーマル発電」に使う燃料に加工する。
 ただ新規制基準の下でプルサーマル発電を導入して再稼働した原発は四基にとどまり、当面増える見通しはない。政策が停滞する中、工場の建設、稼働の意義が問われそうだ。
 規制委の更田豊志委員長は会合後の記者会見で「電気事業者は(MOX燃料の)利用計画を、しかるべき時期に示すことが重要だ」と述べた。
 原燃は2014年1月に審査を申請。耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)を最大加速度700ガルと設定し、敷地が標高55メートルにあるため津波の影響は受けないとしたほか、核燃料物質が一カ所に集積しない設計のため核分裂が連鎖的に起きる臨界は発生しないとした。重大事故として、放射性物質が放出される恐れがある火災を想定し、消火設備などの安全対策を取るとした。
 MOX工場は再処理工場に隣接する場所に建設中。原燃は当初、12年の完成を目指したが、東日本大震災後の工事中断などで延期を繰り返し、現在は22年度上半期の完成を目指している。建設費や操業費などの総事業費は約2兆3400億円に上る見通し。

◆総事業費2兆円、需要なきMOX工場、核燃サイクルと決別の時


 破綻している核燃料サイクル政策の要の1つ、プルトニウムにウランを混ぜてつくる混合酸化物(MOX)燃料の工場が、稼働条件である原子力規制委員会の審査を事実上通過した。消費者が支払う電気代がもとの総事業費は2兆円以上だが、この核燃料は需要を見いだせない。工場の計画推進自体が、検証なきまま原発に固執する国の姿勢を象徴する。
 7月には、MOX燃料で使うプルトニウムを使用済み核燃料から取り出す再処理工場が、規制委の審査を通過した。青森県六ケ所村にある主要2施設が稼働へ向けて前進するが、いずれも稼働の必要性がない。
 まず、国内の使用済み核燃料を再処理する必要がない。日本はこれまで再処理を海外に委託し、英仏に計36トン超のプルトニウムを預けており、これを消費するのが先となる。だがMOX燃料を使える原発は4基だけで、消費量が増える見込みはない。再処理、核燃料工場ともに稼働が必要となる時期がいつになるか分からない状況だ。
 核燃料を繰り返し再利用する夢の政策は、4年前の高速増殖原型炉もんじゅの廃炉決定を機に見直す必要があった。夢の実現に投じられる16兆円が無駄になる前に、政府は「前例踏襲でいいのか」と立ち止まるべきだ。(小野沢健太)

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