ウルグアイ元大統領の清貧さにほれた 映画「ムヒカ−」田部井監督 日本人の生き方 問い掛ける

2020年10月8日 07時18分

映画の一場面。ホセ・ムヒカ元大統領

 ドキュメンタリー映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」(東京・シネスイッチ銀座ほかで公開中、全国順次公開)は、フジテレビの田部井一真(かずま)監督(37)が手掛けた。清貧を尊ぶウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領(85)に心酔し、その人となりを見詰め、日本人の生き方を問い掛ける作品に仕上げた。 (竹島勇)
 「私たちは発展するために生まれてきたのではありません。幸せになろうと思って生まれてきたのです」。二〇一二年、ムヒカ大統領(当時)がブラジルで開かれた国連の会議で発した演説の一節。消費社会に異議を唱え、本当の幸福とは何かを語り、世界中に衝撃と感動を与えた。報酬の多くを貧しい人のために使い、自身は質素に徹する。そんな暮らしぶりも注目を集めた。
 田部井監督は一五年二月、報道・情報番組「Mr.サンデー」のディレクターとして、退任直前のムヒカ大統領にアポなしのインタビューを敢行。それから三年間で五回の取材をした。映画化に際し、「取材映像の総集編では映画として見てもらえない」と悩んだ。その結果、自分の心酔ぶりを前面に出すことにした。例えば、自分の長男に「歩世(ほせ)」と命名したエピソードも入れた。

田部井一真監督

 ムヒカ元大統領と日本との縁にも触れた。幼少期に暮らした地域には一九三〇年代から、日本人が移り住んだ。ムヒカ一家を知る移民を探し出し、そのシーンを挿入。また、二〇一六年の来日時、訪問を熱望した広島で、原爆被害の展示を見学。「日本に来てここ(広島平和記念資料館)を訪れないことは日本の歴史に対する侮辱です」との言葉を印象的に盛り込んだ。大学生との対話集会で、信念を持って生きることの大切さを熱く語る場面もたっぷりある。
 どのシーンもムヒカ元大統領をどう描くか悩んだ末の結果だ。「世界的な存在のムヒカ元大統領を日本人の私の個人の視点で描くしか、私の映画にはならないと気づいた」と率直に話し「元大統領の言葉を自分の問題としてとらえてほしい」と願う。
 四月公開予定だったが、コロナ禍で半年延期された。田部井監督は「五年ほど前、ムヒカがつぶやいた一言、『人と人が直接会って話す時間こそ、生きているということなんだよ』が心に残っている」と振り返り、公開が決まるまで何げない日常の風景がどれほど不確かで、いとおしいものかを実感したという。
<ムヒカ元大統領(ホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダーノ)> 1935年生まれ。ゲリラ活動に参加し投獄経験もある。94年下院議員、99年上院議員に当選。2010年3月から5年間、大統領在任。妊娠初期の中絶合法化、同性の結婚合法化などを実現。

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