「土偶マイム」快演 横浜の学芸員が体でポーズ 国際学会でも大ウケ!

2020年10月9日 07時11分
 10月9日は「土偶の日」。縄文人の美的センスを感じさせる土偶に魅了され、「自分の身体で表現したい」と、パントマイムで土偶を表現する「土偶マイム」に取り組む学芸員がいる。横浜ユーラシア文化館(横浜市中区)の高橋健さん(49)=写真=は「考古資料を身近に感じてもらえるきっかけにしたい」と話す。
 教科書にも載っていて、土偶と言えばこれ。大昔に地球に来た宇宙人の姿だ、なんて話もありますね」。九月下旬、高橋さんに土偶マイムを見せてもらうと、自作のナレーションに合わせて亀ケ岡遺跡(青森県つがる市)の「遮光器土偶」など、五つのポーズを取ってくれた。茶色い全身タイツに身を包み、大きな目はおもちゃのサングラス、欠けた片脚は透明な筒の上に左脚を乗せて曲げることで表現し、ピタリと動きを止めた。

<重要文化財 遮光器土偶> 青森県つがる市木造亀ケ岡出土 縄文時代晩期 東京国立博物館蔵出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

<遮光器土偶> 最も有名な土偶の一つ。表面はよく磨かれ、内部は中空。巨大な目が北方民族の遮光器(ゴーグル)に似ていることから、発見された明治時代に「遮光器土偶」と命名されたが、現在は目を強調して表現したものだと考えられている。

 棚畑遺跡(長野県茅野市)の「縄文のビーナス」と呼ばれる土偶は、全身タイツの内側に仕込んだ風船を膨らませて、丸みを帯びたお尻を表現。目を細めて表情もつくり、おわんを胸に当てて「ビーナス」を演じきった。真面目に解説するナレーションと、コミカルな土偶マイムの落差に思わず笑いが込み上げる。

<国宝「縄文のビーナス」> 長野県茅野市の棚畑遺跡出土 縄文時代中期(茅野市教育委員会蔵)

<縄文のビーナス> 縄文時代の墓とみられる穴から、ほぼ完全な姿で出土した。顔つきは縄文中期の土偶に特徴的なつり目。下半身が太く、おなかが丸くふくらんでいることから、妊娠した女性を表したと考えられている。1995年、土偶としては初めて国宝に指定された。

 もともと、高橋さんの専門は動物の骨を素材にした「骨角器」で、土偶は専門外だ。土偶との出合いは二〇〇九年に東京国立博物館で開かれた「国宝 土偶展」。人の身体を大胆にデフォルメした土偶の数々を見て、「逆に土偶を身体で表現したら面白いのではないか」とひらめいた。
 東京大大学院在学時からパントマイムを習い、近所の祭りなどで披露していた。「土偶マイム」と名付け、一六年ごろから国内外の学会や大道芸イベントで披露するようになった。国際学会で見せると、静かだった会場がどっと沸き「日本には能や歌舞伎の文化があるが、土偶マイムもその系譜なのか」と質問されたという。

<板状土偶> 青森市の三内丸山遺跡出土 縄文時代中期(青森県教育庁文化保護課三内丸山遺跡対策室提供)

<板状(ばんじょう)土偶> 全国最多の二千点以上の土偶が出土した三内丸山遺跡でも、これは最大級。長さ三十二センチもある。胸とへそはボタンのような粘土を貼り付けており、パンツのような表現があるが脚は省略されている。首のところで割れており、二つの破片は九十メートル離れた地点から出土した。

 形が特徴的な土偶を選んで、現在のレパートリーは四十四種類。学会には本名で登場するが、祭りなどへの出演では学生時代に飲み会の余興で使っていた芸名「白鳥(はくちょう)兄弟」を名乗る。不自然な形でポーズを保つため、「長くやると腰痛と脚の痛みが出て、表情もプルプルしてくる」。口を大きく開けた土偶を演じる際は「あごが外れそうになったことがある」という。

<筒形土偶> 横浜市都筑区の原出口遺跡出土 縄文時代後期(横浜市歴史博物館提供)

<筒形土偶> 手足がなく、中空の筒状の胴体をもつ土偶。眉と鼻は粘土ひもで表現され、ぽかんと口をあけて斜め上を見上げている。焼けた竪穴住居から出土したもので、住居の廃止に伴う儀礼で使われたのかもしれない。

 土偶は、まじないや魔よけのために作られたといわれるが、「用途も含めて、実は分かっていないことが多い」と高橋さん。一方、「土偶は専門家でなくても知っている数少ない考古資料。土偶マイムは、多くの人に親しみを持ってもらえると思う」と語る。
 十一月二十一、二十二日には、横浜ユーラシア文化館で開くイベントで、土偶マイムを披露する予定。「土偶マイムを見て、謎の多い土偶に思いをはせてほしい」と話している。

<土偶形容器> 神奈川県大井町の中屋敷遺跡出土 弥生時代前期(大井町教育委員会提供)

<土偶形容器> 関東南西部で最古の農耕の証拠が見つかった遺跡から出土。発見時は中に幼児の骨が入っており、現在の骨つぼのような用途で使われたとみられる。縄文時代から続く土偶が、弥生時代になっても役割を変えて存続していたことを示している。

 文・志村彰太/写真・芹沢純生
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