「村は1000億円だって売れない」 核ごみ調査受け入れで北海道神恵内村の高橋村長

2020年10月9日 18時12分
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、北海道神恵内村の高橋昌幸村長は9日夕に記者会見を開き、国から申し入れがあった第1段階となる「文献調査」の受け入れを正式表明した。「総合的に判断した。文献調査をする中で、議論を深めたい」と話した。

核のごみの最終処分場選定を巡り、記者会見で文献調査の受け入れを正式表明する北海道神恵内村の高橋昌幸村長=9日午後、神恵内村役場で

文献調査では国から最大20億円の交付金を受け取ることができる。高橋村長は「貧乏な村ですけど、20億、30億で村を売るのかという方もいますけど、そんな金で村を売れますか。100億だって売れないじゃないですか。1000億だって売れない。ぜひそういうところを理解していただきたい」と語った。
9日午前中には村の約40キロ南にある寿都すっつ町が文献調査に応募しており、同時期に北海道の2町村で調査が始まる可能性がある。会見での主なやりとりは以下の通り。(まとめ・原発取材班)

◆核燃料サイクルを完結させる必要がある

Q)これから何を期待するか。
第一は、核燃料サイクルを完結させる必要があるという思いですよね。よく耳にされていると思いますが、「トイレのないマンション」だと言われてますから、トイレを作る必要があると私は思っていました。「トイレのないマンション」をつくってどうなんだという意見はあったと思うが、今トイレを作ろうということでね、そういうことです
Q)国からの交付金については。
20億円と言われてますけど、こんなこと失礼かもしれませんが、そんなに重要視してませんよ。いただけるものならいただきますけど。貧乏な村ですけど、20億、30億で村を売るのかという方もいますけど、そんな金で村を売れますか。100億だって売れないじゃないですか。1000億だって売れない。ぜひそういうところを理解していただきたい。
Q)交付金の使い道は
大変申し訳ないけど、一切考えてません。いただける額がどれくらいかもわからない。村民の皆さんの幸せのために全部使いたいと思います。産業振興、観光振興、それから福祉、教育。今までもやってきたけどさらに充実させていきたい。

◆概要調査までとか精密調査まで行くとか一切申し上げていない

Q)文献調査を受け入れるが、どこまでいくべきと思うか
文献調査を受け入れるという議会の議決ですから、それから先は今のところは考えていません。その後のことは、そのときに検討するということで、ご理解いただきたい。文献調査ですから、概要調査で止まることもあるでしょう。神恵内で考えているのは、文献調査の受け入れですから。知事との懇談でも私から申し上げています。知事も概要調査には反対だと。私も概要調査までいくとか精密調査までいくとかも一切申し上げてませんし、だめかもしれませんしね。文献調査でだめになれば一切先に行かないわけですし。
Q)議会の議決を待ってから決めるのか
仮定の話ですけどね。そうじゃないですか。知事がだめと言っている以上、だめじゃないですか。知事か首長が反対なら進まないんだから。そりゃだめしょう。私も概要調査に行くとは言ってませんから。
Q)先ほどトイレのない問題と言ったが
全国で考えるべき問題。神恵内がいくべきだとは言っていない。神恵内村が最終処分までやるべきだという意味で言った訳ではない。そこは誤解のないようにお願いします。
北海道電力泊原発(泊村)の隣接ということで、原発に密接にかかわってきたという住民の思いがある。住民の気質というのかな、みんなで村作りをできるだけ多くの人のサインを得て、村作りをしようということを私は進めてきました。そこが少しは住民の方々も考えていただいているのかなと思いますけどね。寿都町も努力されていると思います。人口も違いますよね、あそこ3000人かな、うちは800人くらいですからそこらへんも違いますよね。
大概のことは先ほど申し上げましたけど、議会の議決、住民説明会での声、出られなかった人から私がいただいた声、これらの声が決断の基になっていると理解していただきたい。

核のごみの最終処分場選定を巡り、経産省の小沢典明首席エネルギー・地域政策統括調整官(右)から文献調査の申し入れ書を受け取る北海道神恵内村の高橋昌幸村長=9日午後、神恵内村役場で

Q)経産省の申し入れがあるかないかにかかわらず決心は固まっていたのか。
まぁ経済産業大臣の申し入れも大きかったと思いますけど、その三つですか。それが突き動かしてということで。あまり大臣に失礼なことになると困るので。
Q)泊原発と歩んできた村として核燃料サイクルを完結させないといけないということだが、交付金を受け取ってきた村としての責任か。
お金もらってくるからそういうことになるというのは違うと思う。そういうことではない。私は心の問題を先ほどから申し上げている。これが皆さんに理解されるかは分からない。二次的、三次的にはお金も関係するのかもしれないが、私のみはそうじゃないと思っている。
Q)交付金は重視してないというが、ならばなぜ応募するのか。
国の政策、核燃料サイクルを完結させるということが重要ですから、これに協力したい。きれいごとばかりですけど、いただけるお金は返上しませんよ。返上したら村民から総スカンを食らいますから。20億円と言われますけど、道にどれくらいいくのかとかわからないし、全部が村にくるわけではないと聞いている。その比率も私は知らないんですよ。

◆文献調査をてこにするといわれたとき、力不足を感じた

Q)住民説明会では人口減や過疎化を理由にして受け入れを説明していたが。
そういうご意見ね、非常に私も胸を痛めておりました。18年、村長をして、過疎化を食い止める対策、少子化対策をやってきましたけど、なかなか実を結ばなかったというのが率直なところでありまして、それに住民の方たちが文献調査をてこにすると言われたとき、非常に私の力不足を感じました。そういう住民の思いと一緒に、神恵内村を振興させていくということができれば、それも一つの方法だと思う。文献調査で2年で何ができるかはまだ考えていないので、これから村民と一緒に考えて、村がよくなるためにみんなで考える場になればいいと思う。私の思いを伝えながら、村民が私の村政に対して飽き足らない点などを率直におうかがいして今後に生かしていきたい。私も70歳ですのでそんなに長くないと思うので、後を継ぐ人にも勉強してもらいたい。
村民の心を一つにどうまとめあげていくか、どういったことができるのか、できる良い機会になれば、受け入れた最大の成功だと思う。仮に2年で終わっても、村民の意見を出し合う良い機会になればいいなと思う。
Q)昨日は気持ちの整理をしたいと言ったが整理できたか。
はい。そのように考えていただいて結構です。私も本当にぐずなんですけど、決断しなければいけないときはしないと。今まで大きな決断をしたことはあまりないんですけど、時間かかりましたけど、初めて大きな決断をしたと思います。

核のごみの最終処分場選定を巡り、記者会見で文献調査の受け入れを正式表明する北海道神恵内村の高橋昌幸村長(奥中央)=9日午後、神恵内村役場で

Q)昨日は何が引っ掛かっていたのか。
私は臆病でぐずなもので、できれば100%でいきたい。そこが少し引っかかっていた。100%なんてなかなかないのは分かっているんだけど、できるだけ多くの人に理解いただいて前に進みたいと思っていて、いろんな政策を決定するのにも時間がかかるんです。ほかの首長に比べて頼りない首長だと思う。その分、職員や村民が私を支えてくれている。申し訳ない。

◆交付金目当てでの応募ではない

Q)村の財政が困っているのに、交付金には関心ないというのはどういうことか。商工会からの請願があったから進めているのではないのか。
先ほども申し上げたけど、交付金を目当てにと言われるけど、それがあるから応募したということは私はないです。請願の何でしたっけ。商工会長も人口減少とかを食い止めるためという思いがあったのではないかと、私は思っている。
Q)11日の住民説明会は、村民の意思を聞くのか。
今日表明したのでね、受け入れ表明をしたことの報告という場になると思います。いろんな心配などに私が答えられることには答えるし、専門的なことは国や原子力発電環境整備機構(NUMO)に照会した上でお答えすることになると思います。国やNUMOは同席を求めていません。
Q)表明に対する全責任を持つということはどういうことか。
これからね、たぶん反対されている人もいるし賛成しているひともいるし、そういうことから起きる現象とかすべての現象に私が一切の責任を持つという思いで言いました。
Q)風評被害も含めて
それらも含めて私が全責任を持つと言っています。
Q)役場に誹謗ひぼう中傷の声が寄せられた。どう受け止めるか
反対の人も賛成の人もいるし、圧倒的に反対の人の文書が多いわけですし、しっかりとしたご意見をいただいている人もいます。全部目を通してますから。そういう人もいるし、単に死ねとかくずとか、(寿都町の)片岡町長と地獄に行けとか、心ないはがきをいただくと心が痛みますよね。いくら覚悟はしていたとはいえね。もう少し自分の意見を述べて、私たちの心に響く意見を寄せていただければありがたいなと思う。でも、これは仕方ないです。いろんな意見がありますから。プルサーマルのときも毎日100通とかありましたから。
Q)責任というのは進退か。
私たちの職はいつでも進退をかける仕事です。村民から引っ込めといわれて声が強ければ引っ込まなければいけない職です。そういうことは日常的に認識しながら勤めています。

◆取材したご縁で今後も村に足を運んで

Q)知事が反対すると進まないと言うが不安に思っていることは。
それは全面的に信用してます。信用しなければならない。国が国民を奈落のふちに外すようなことはしないと思っています。国を信用しないで、私が村民に村を信用してくださいとは言えない。その言葉は信用しています。もしそういう言葉をたがえることを国がすればですよ、村民を代表して国に厳重に抗議する。
Q)準備不足ではないか。
そういうことをですね、事前に決めてから受け入れるということにはならないんじゃないでしょうか。まだ、受け入れを今日表明したばかりですから、これから正式な手続きをしていくという段階で、その後に国のことを勉強させていただくということでも間違っていないんじゃないかなと思います。ご指摘の通りなら、議決を待たず住民の声を聞かず進めるということにならないか。
明日からさみしくなると思う。遊びに行かないとか、神恵内のものを買わないとか、是非皆さんは取材をしたご縁として今後も村に足を運んでいただきたい。

関連キーワード

PR情報

主要ニュースの最新ニュース

記事一覧