「まるで陸の孤島」武蔵小杉タワマン浸水1年 再発防止へノウハウ共有

2020年10月10日 06時00分

昨年10月の台風で全棟停電となったパークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー。被災1カ月後には元の暮らしに戻ったという=川崎市中原区で

 昨年10月の台風19号で、川崎・武蔵小杉の47階建てタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」(川崎市中原区)は浸水による全棟停電に見舞われた。電気も水道もエレベーターも長期間使えず、「まるで陸の孤島だった」と振り返る居住者たち。被災の実態を語り、同じような被害を防ぐノウハウの共有を呼びかけている。(石川修巳)
 台風が上陸した12日夜、増水した多摩川の泥水が下水道管を逆流し、武蔵小杉駅周辺を水浸しにした。フォレストタワーも電気設備がある地下3階が浸水。真下の地下4階にゲリラ豪雨に備えた雨水貯留槽があり、建物周辺の雨水升を通じて大量の水が流入した。下水道に排出するポンプの能力を超え、地下3階に水があふれた。

昨年10月12日夜から13日未明にかけ、電気設備のある地下3階への浸水を防ごうと集まった居住者たち=管理組合提供(一部画像処理)

◆「数日間は復旧ムリ」

 「電気・水道の復旧は当分の間できません。※数日間はムリです」。一夜明けた13日朝、マンション掲示板の手書きの告知が、異常事態を告げていた。管理組合によると、居住者は643世帯、1500~1800人。ある住民は「情報源は充電が残ったスマートフォンのみ。絶望的な気持ちになった」と述懐する。
 管理組合の理事長経験があるデザイナー本平基さん(42)は、停電で自宅の仕事場も生活の場も使えなくなり、約2週間の避難生活を余儀なくされた。「こんな浸水リスクがあるとは知らなかったし、災害といえば地震しか考えていなかった」と語る。

◆オープンチャットで情報共有

 直面した課題は、情報の共有だった。張り紙をするにも、47階建てを巡るのは大変だ。そこで、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で多数の人が参加できる「オープンチャット」機能を活用。居住者約900人が参加し、「エレベーターホールに簡易トイレを追加で置きました」などと周知した。

「再発防止のノウハウを共有したい」と語る管理組合理事長の海老澤健太郎さん㊧と本平基さん

 原因究明や再発防止策を検討する人材もチャットで募集。建築専攻の大学院生や石油プラントのエンジニア、弁護士など約40人が名乗りを上げた。取りまとめ役を担った現理事長の海老澤健太郎さん(45)は「専門的な知見のある人が驚くほどいた」と振り返る。
 管理組合によると、電力は被災から約1週間、水道は約2週間で復旧。1カ月後には被災前とほぼ同じ生活に戻った。

◆人のつながりがマンションを強くする

 短期的な再発防止策として、雨水貯留槽への流入を止める止水バルブを新たに追加。1階出入り口に設置する止水板も用意した。「これで今回のような被害は防げる」と海老澤さん。
 周辺のタワマンのうち、交流のある12棟だけでも、住戸数は約7000世帯、2万人に及ぶ。「もし複数のタワマンで同時に被災したら、こんなに早く復旧できなかった。ノウハウの共有が大切で、人のつながりこそがマンションを強くする」と実感している。

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