学術会議の実態は?固定給、年金なし…自腹出張も

2020年10月10日 06時00分
 「自分の後任を指名できる」「ずっと答申を出していない」―。日本学術会議について、組織の硬直化や存在意義を問う声や、年間10億円の国庫負担から監督権の正当性を訴えるなど、菅義偉首相の任命拒否問題から論点をそらす動きが出ている。会員の選び方や、活動実態はどうなっているのか。(梅野光春、望月衣塑子)

◆会員は後任指名できず

 「現在の会員が自分の後任を指名することも可能。推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた」。菅首相は5日、こう述べて会員候補6人の任命拒否の正当性を主張した。
 だが日本学術会議の事務局によれば、現会員が自身の後任を指名することはできない。選考では、現会員らの推薦を基に選考委員会で議論。幹事会や総会の承認を経て、会長が首相に推薦した上で任命される。
 このため「後任にしたい人を推薦し、選考対象に入れることはできても、後任指名は不可能」と事務局担当者は説明する。全国の学者から選挙で選ぶ公選制や、学会からの推薦制がとられた時期もある。だが選挙運動の過熱や、推薦母体とのしがらみが表面化し、今の制度に落ち着いた。

◆「提言」は先月だけで25件

 8日の参院内閣委員会では、日本維新の会の高木佳保里氏が「政府への答申や勧告が過去10年以上、出されていない」と指摘。会議のあり方を見直すべきだと主張した。確かに、政府に答申した最新の事例は2007年の「地球規模の自然災害の増大に対する安全・安心社会の構築」。また、科学的な分野で政府に実現を求める「勧告」は10年8月以降、途絶えている。
 しかし、同会議で専門分野ごとの分科会などが公表する「提言」は、「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して」など、先月だけで25件をウェブサイトで公表している。
 国民民主党の矢田わか氏は同委員会で、こうした提言や、STAP細胞の不正問題後に再発防止策をまとめたことなどを挙げ、「独立した専門機関として活動する意義は大きい」と主張。また同会議の広渡清吾・元会長は9日の野党ヒアリングで「答申がないのは、政府が諮問しないから。諮問があればたくさん提言できる」と言い切った。

◆ぎりぎりの予算で運営

 会議の予算は政府からの約10億円で賄う。本年度予算では職員約50人の人件費や事務費などに約5億5000万円、国際的な学術会議の分担金に約1億円を計上した。事務局職員は各省庁から派遣される国家公務員で、数年ごとに異動する。
 会員210人に固定給はなく、元会員への年金制度もない。総会や分科会に出ると支給される手当は、会長は日額2万8800円、会員は同1万9600円。手当の合計額は本年度予算で、会員は約7200万円、運営に協力する約2000人の「連携会員」は約1億300万円。交通・宿泊費は別に実費精算される。
 会議元幹部は「議論の活発な分科会は会議も多い。年度末には、手当や旅費支払いの一時凍結や受領辞退のお願いを会員に送っていた。節約のためネット会議も多用するほか、自腹で出張する会員も多い」と話す。ぎりぎりの低予算で運営されているのが現状だ。

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