コロナ禍が引き起こす食料難 命つなぐ支援「地球規模で」 ノーベル平和賞のWFP

2020年10月10日 06時00分

2017年1月、アフガニスタン・カブールで、国連世界食糧計画(WFP)から食糧を受け取った子どもたち=いずれもAP

 世界各地で飢餓撲滅に取り組む国連世界食糧計画(WFP)が、今年のノーベル平和賞に決まった。世界の死者数が100万人を超えた新型コロナウイルスの流行は、各地で食料生産や就労に暗い影を落とし、大規模な食料難を引き起こしている。発展途上国を中心に、支援の必要性はかつてなく高まっている。(パリ・竹田佳彦)

◆未曾有の危機に対応

 WFPは災害や紛争などで食料事情が悪化した国・地域に緊急支援を届け、経済や社会の発展を後押しするため、1961年に創設が決まった。
 2015年の国連サミットで定められた「持続可能な開発目標(SDGs)」では、貧困対策に次ぐ2番目の目標として30年までに飢餓ゼロを設定。WFPは実現へ向けて、紛争地や大規模災害の被災地など各国への食料支援に取り組む。

2018年5月、アフリカ・南スーダンで、国連世界食糧計画(WFP)が上空から配布した食糧の袋からこぼれた穀物を拾い集める女性


 毎年、アフリカやアジアを中心に80カ国8000万人以上を支援してきたが、新型コロナウイルスの流行拡大を受けて今年は過去最多の1億3800万人に増やす。「未曽有の危機には前例のない対応が必要。迅速かつ効果的に対応しなければ、途方もない数の人命が失われる」。デービッド・ビーズリー事務局長は危機感を募らせる。

◆コロナが収入も奪う

 新型コロナは、各国の食料状況を直撃した。WFPによると感染抑制の移動制限は日雇い労働者から仕事を奪い、収入源を絶たれた人は食料難に陥った。農業従事者の減少で生産も滞り、国境の封鎖は周辺国で生産した食料品の輸入を阻害。東アフリカのケニアでは、近隣国ルワンダの工場で作った栄養強化食品が直接運べず、別の国経由となった。
 不足する食料は、価格高騰ももたらしている。記録的な規模のバッタ飛来による収穫への打撃が、東アフリカ等で飢餓に追い打ちをかけている。
 貧困世帯1500戸に電子マネーを配布した南米ボリビア事務所のアナ・マリア・サルワナ代表は報告書で「既に経済的影響を受けてきた支援対象者にとって、新型コロナは最後の一撃になる危険性がある」と指摘。命に関わる可能性に懸念を示した。

◆ワクチンできるまでは栄養確保が重要に

 「コロナ禍は確実に授賞理由に影響した」。ノーベル委員会のレイスアンデルセン委員長は9日の会見でそう認めた。従来は飢餓の心配のなかった地域でも、新型コロナをきっかけに栄養不足が広がる可能性がある。
 医療専門家は、新型コロナが高齢者やほかの疾病がある人ほど深刻な影響を受けるとしつつ、十分に栄養を確保できない人の症状悪化に懸念を示す。
 ビーズリー氏は「ワクチンができるまで、この混沌に対する最善のワクチンは食料だ」と指摘してきた。レイスアンデルセン委員長は会見でこのせりふを引用し、「近年は多国間主義が軽視されている」と自国中心主義の流れをけん制。「地球規模での協力が重要だ」と強調した。

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