学術会議改革 強権的手法は許されぬ

2020年10月10日 07時44分
 菅内閣が日本学術会議を行政改革の対象にする、という。菅義偉首相は会員任命を拒み、学問の自由を脅かすとの批判を浴びたばかりだ。人事権を盾に改革を迫るような強権的手法は許されない。
 河野太郎行政改革担当相は九日の記者会見で、日本学術会議を行政改革の検討対象とする考えを示した。二百十人の学術会議の会員数や手当には踏み込まず、国から支出される年間十億円の予算や会議事務局の約五十人の定員を見直す。
 すでに自民党は党内にプロジェクトチームの設置を決め、学術会議の改革に関する提言を年内にまとめる、という。
 こうした政府与党の動きは、学術会議側が推薦した会員候補のうち、菅首相が六人の任命を拒否したことと無関係ではあるまい。
 「学問の自由を脅かす」「違法な決定」などと厳しい批判を浴びたため、組織の在り方や会員選出方法について議論する姿勢を示すことで論点をずらし、批判をかわそうとしているのだろう。
 六人はいずれも、特定秘密保護法や安全保障関連法など、菅内閣が引き継ぐとした安倍前内閣の政策に反対を公言した学者である。
 学術会議も二〇一七年、安倍前内閣が進めた防衛省による軍事応用可能な基礎研究への助成制度を念頭に「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とした過去の声明を継承すると表明した。
 そのいずれも自民党政権には煙たい存在に違いない。だからといって、独断的な人事権行使が批判された腹いせに、組織改革を持ち出すのは筋違いも甚だしい。
 自民党の下村博文政調会長は、学術会議が近年、政府への答申や勧告を出しておらず「活動が見えず、課題がある」としている。
 確かに学術会議は法律に基づく政府への「答申」を〇七年以降、「勧告」を一〇年以降出していないが、それが組織の在り方に起因するものかどうかは、慎重に検証する必要があるだろう。
 学術会議の組織を見直す必要があるとしても、それによって任命拒否が正当化されることはあり得ない。
 任命拒否は、国会で政府が説明してきた法律の解釈に反する独断的で違法性を否定できない行為だからだ。菅首相は直ちに任命拒否を撤回するか、明確な拒否理由を説明すべきである。
 その上で、日本を代表する学術組織としてふさわしい学術会議の在り方を検討すればいい。任命拒否とは切り離し、落ち着いた政治状況の下で論じる必要がある。

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