GAFA(ガーファ)という悪魔に ジャック・セゲラ著

2020年10月11日 07時00分

◆暴走する巨大企業への危機感
[評]矢部史郎(ライター)

 子供が成長していくにしたがって、親からの干渉を嫌うようになる。子供はいつか親離れしなくてはならないし、親はいつか子離れしなくてはならない。子供が大人になるためには、親はある段階で世話焼きをやめなくてはならないのだ。
 ビッグデータ産業、デジタル通信機器によって膨大な個人情報を収集するIT企業は、SF小説『1984』になぞらえて「ビッグブラザー」と呼ばれる。その不快さを強調するのなら「ビッグペアレント」と呼びかえてもいいのではないかと思う。詮索好きで干渉しすぎる巨大な親。デジタル通信機器は、何でも知りたがる親のようなものだ。
 本書は今世紀に入って急速に成長したデジタル産業を問題にしている。GAFAとは、四つの企業の頭文字をとった総称である。Google社、Apple社、Facebook社、Amazon社で、いずれも二十一世紀に急速に成長した地球規模のアメリカの巨大企業だ。
 これらの企業は、通常は無視されるような些細(ささい)なことも記憶していて、その人がどんな食べ物を好むか、どんな映画を見たか、どんなロマンスを望んでいるかを、知っている。そして、それらのセンシティブな情報を、見ず知らずのセールスマンにベラベラと喋(しゃべ)ってしまうのである。
 著者はフランスで広告業を営む人物である。広告業は、GAFAの成長によってもっとも打撃を受けた分野である。GAFAは広告・マーケティング分野で巨大な収益をあげ、先行する広告会社のパイを奪っていったからである。著者の告発は、抽象的な言い回しを用いながら、ときに非常に生々しいものだ。それは熾烈(しれつ)な競合に敗れてきた者が、間近で見てきたGAFAの姿である。
 EU諸国は、この巨大企業の暴走に規制をかける取り組みを始めている。それはアメリカ企業から自国の産業を保護するためというだけではない。ここには、新興のIT産業によって人間の倫理観が根本から損なわれてしまうのではないかという危機感がある。
(佐藤真奈美、小田切しん平訳、緑風出版・2420円)
 1934年、パリ生まれ。広告会社副社長。著書『広告に恋した男』。

◆もう1冊

 ジェリー・Z・ミュラー著『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(みすず書房)。松本裕訳。 

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