コロナで打撃を受けた地方名店の“秘伝の味” 新橋の「絶メシ食堂」が再現、売り上げの一部還元

2020年10月10日 11時55分

地方の飲食店の味を再現し提供する、「烏森絶メシ食堂」の経営会社の大久保伸隆代表取締役。(手前から時計回りに)群馬県高崎市「松島軒」の黄色いカレー、同市「からさき食堂」の白いオムライス、千葉県木更津市「大衆食堂とみ」のポークソテーライス=東京・新橋で

 絶やしたくない絶品グルメ―。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた地方の小さな飲食店の味を東京都心の店が再現し「絶メシ」として提供する試みが始動している。“秘伝の味”を伝授してくれた店には売り上げの一部を還元し、経営にも貢献する。
 東京・新橋のビルの谷間にある「烏森絶メシ食堂」。ランチタイムになると、小さな店舗が客でにぎわう。お目当ては、昔ながらの黄色いカレーやホワイトソースをかけたオムライス…。群馬県高崎市などで地元の人に愛されている4店舗の味だ。
 絶メシ食堂の経営会社の代表取締役大久保伸隆さん(37)がこの仕組みを思い付いたのは、緊急事態宣言中の4月。小さな飲食店が次々と廃業していく状況を伝えるニュースに「何かできないか」との思いが募り、売り上げ還元を考案した。
 肝となるレシピの依頼は容易ではなく、何度も店に足を運んだ。3代続くカレーの味を託した高崎市の大衆食堂「松島軒」の木内健太郎さん(49)は「最初はなんて虫のいい話かと思った」。教えるのは抵抗があったが、話し合いを重ねるうちに信頼が芽生え、秘伝のルーを提供する条件で折り合った。
 松島軒の4月の売り上げは例年の7割減で赤字。心労で体重も減少し、食堂から支払いを受けた時は「自分が作ったものを使ってくれる人がいる」と元気づけられた。「今はテレビでうちのカレーが映ると『少し薄いかも』とLINE(ライン)で連絡してしまう」と笑う。

東京・新橋のビルの谷間にある「烏森絶メシ食堂」

 絶メシはもともと、高崎市が昔ながらの地元の飲食店や名物料理を応援するために開設したウェブサイト「絶メシリスト」に由来する。リストは石川県や福岡県柳川市でも作られており、大久保さんは絶メシの知名度も追い風にしたい考えだ。
 帝国データバンクによると、緊急事態宣言や外出自粛などの影響で2020年上半期の飲食店の倒産件数は過去最多の398件。うち約8割は負債額が1000万~5000万円未満の小規模な倒産だった。人手不足や店主の高齢化で営業が困難になる個人経営店が増えていた中に、コロナが追い打ちを掛けた形だ。
 大久保さんは「地域の名店がなくなってほしくない」と、絶メシ食堂や取り扱うレシピ提供店を増やし、それぞれの提供店に月10万円程度支払うことを目指す。「一緒にやりたい人が全国から出てくるとうれしい。将来は店を通じて飲食を志す人たちが絶メシを知り、引き継ぐ流れを作る」と先を見据えている。 (共同)

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