法制化へ30年の取り組み実る 「雇わず、雇われない働き方目指す」

2020年10月11日 05時50分
 協同労働という新たな働き方を法的に裏打ちする超党派の議員立法が、26日召集の臨時国会で成立する見通しとなった。企業に雇われず、同じ志を持つ人が支え合い、主体的に働く協同労働。法制化の背景には、民間団体や与野党議員らの約30年に及ぶ取り組みがあった。(石川智規、坂田奈央)

◆源流は戦後の失業者対策事業

 「良い仕事とは何だろう。何のために働くのか。労働者は企業の部品なのか」。強く法制化を訴えてきた日本労働者協同組合連合会の古村伸宏理事長はこう問いかける。答えを模索する動きが協同労働の理念を形づくり、立法への原動力になった。
 労協連の源流は戦後の失業者対策事業にさかのぼる。1970年代には自治体などから地域の清掃などを請け負う「中高年雇用福祉事業団」として活動。だが労働者の働きぶりは必ずしも近隣の評価を得られず、「自治体が集めた税金から給料をもらっているのに…」と批判する住民とのあつれきを生んだ。
 雇用され、指示に従うだけの受動的な働き方で良い仕事はできるのか。地域に愛されるにはどう働くべきか―。自問を続けた事業団は80年代に欧州で発展した「労働者協同組合」に着目した。現地に調査団を派遣。仲間同士でお金を出し合い、共に働く組織に活路を見いだした。

◆「ブラック企業に悪用されかねない」

 86年、事業団は「労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会」に改組。95年から関係省庁と法制化に向けた協議を始めた。国会審議では2001年3月、坂口力厚生労働相が協同労働の理念に触れ「多様な就労環境の整備が重要」と答弁。法制化の機運が高まる。08年には、超党派の「共同出資・共同経営で働く協同組合法を考える議員連盟」が設立された。
 民主党政権が09年に発足し、協同労働の具体化が進んだが、その枠組みには「低賃金で長時間労働を強いるブラック企業や偽装請負などに悪用されかねない」との指摘もあり、議論はいったん棚上げに。それでも超党派議連の検討作業は続き、安倍政権下の17年に法案作成の議論を開始。20年6月に与野党全会派の合意と賛同を得て衆院に法案が提出された。

◆「コロナ禍のピンチをチャンスに」

 今月8日、国会内で公明党の桝屋敬悟衆院議員らが法案成立に向け「法案提案者・担当者会」を開催。出席議員らは「コロナ禍のピンチをチャンスに変える法案だ」と意義を強調した。
 協同労働を推進してきたワーカーズ・コレクティブネットワークジャパンの藤井恵里代表は「私たちは誰も雇わず、誰にも雇われない働き方を目指してきた。この法律を使って働く基盤をつくれるといい」と期待を寄せた。

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