金正恩氏、異例の未明パレードで国民に感謝強調 朝鮮労働党創建75周年

2020年10月11日 05時50分

北朝鮮の朝鮮労働党創建75年を記念して、平壌の金日成広場に作られた人文字。朝鮮中央テレビが10日放映した=AP

 北朝鮮は朝鮮労働党創建75周年を迎えた10日未明、平壌で軍事パレードを開催した。異例の深夜行事で演説した金正恩朝鮮労働党委員長は国民に対する感謝を重ねて表明し、内部結束を図った。民衆の情に訴えることによって、経済の苦境克服に向けた国威を発揚する狙いがある。(ソウル・中村彰宏)

◆参加者にマスク姿なし「感染者出ていない」

軍事パレードで演説する金正恩党委員長。朝鮮中央テレビが10日放映した=共同

 午前零時を告げる鐘の音が響き、花火が夜空を彩る。続いて正恩氏が姿を現すと金日成広場は大歓声に包まれた。「国民が成し遂げた偉大な勝利だ」。参加した人々の中にマスク姿は見えない。正恩氏は演説で新型コロナウイルスの感染者が一人も出ていないとした上で、こう強調した。
 韓国メディアなどによると、軍事パレードは午前2時ごろまで続いた。これまでは午前10時ごろの開始が通例だった。
 ソウル平和研究所の朴英鎬所長は「コロナに注意して参加人員を抑制しつつも、75周年は盛大に祝わなければならない。複合的な理由から深夜に開催したのではないか」と指摘。パレードによる新型兵器の分析を困難にするため、との見方もある。

◆経済制裁、新型コロナ、台風被害の「三重苦」

 75周年を祝う大きな目的は、国威発揚だ。正恩氏は「正面突破戦」を掲げ、経済の自力更生を目指してきたが、対米交渉の停滞で国連の経済制裁は長期化。今年は新型コロナウイルスに加えて台風被害にも見舞われ、「三重苦」の苦境に立たされている。この日の演説の中でも正恩氏は「国民に報いることができず面目ない」と謝罪した。
 来年1月の党大会で新たな「国家経済発展五カ年計画」と策定するとしており、5日の党政治局会議では、党大会まで国民総動員で経済建設に取り組む「八十日戦闘」を展開することを決定。党創建75周年は、経済立て直しに向けて内部結束を図る絶好の機会でもあった。韓国統一省関係者は「北朝鮮の経済状況はかなり厳しいようだ。今は外交よりも国内を重視せざるを得ない」と話す。

◆米朝関係への直接の言及なし

 「5年前と比べて軍事力は大きく発展し、どんな脅威にも対応できる抑制力を持った」と軍備増強の成果を強調する一方で、米朝関係への直接の言及はなかった。来月に大統領選を控える米国に対する過剰な挑発は避ける意図とみられる。
 正恩氏はトランプ氏とは史上初の米朝首脳会談を実現させ、一定の関係を築いたが、バイデン氏が勝てば対米戦略の練り直しを迫られるからだ。選挙戦でトランプ氏の劣勢が伝えられる中、大統領選前に武力挑発してトランプ氏を後押しするのではとの見方もあるが、朴所長は「大統領選前に強い行動に出るのは北朝鮮にとっても負担が大きい。当面は様子見だろう」と指摘。大統領選の結果を見極めた上で、来年の党大会で対米方針を発表するとみられる。

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