被災地で演奏続けるトランペット奏者 台風19号で知った支援のありがたさ

2020年10月12日 18時00分
 記録的な豪雨で全国各地に甚大な被害をもたらした昨年10月の台風19号が上陸し、12日で1年。阪神大震災や東日本大震災の被災地を訪れ、トランペット演奏を続けている川崎市中原区の松平晃さん(78)の自宅も半壊し、自らも被災者となった。「被災の大変さを分かったつもりでいたけれども…。激励や親身な手助けがありがたくて、涙が出た」と振り返る。(石川修巳)

◆1階が泥水に…ボランティアに助けられ

「あらためて助け合いの大切さを感じた」と語る松平晃さん=川崎市中原区で

 昨年10月12日、川崎市では増水した多摩川の泥水が下水道管を逆流し、浸水被害が出た。
 「ブク、ブク、ブク…」。中原区上丸子山王町の松平さん宅では、そんな音を立てて自宅玄関のすきまから水が入ってきた。大事なものは2階へ。気がつくと、泥水に漬かった1階の廊下をスリッパが漂っていた。停電になり、フェイスブックで「2階に避難しています」と被災状況を発信。すると、励ましが次々寄せられたという。
 浸水は床上60センチに達し、市から「半壊」と判定された。1階にあったたんす、ベッドなどは捨てるしかなかった。「まさかここまで水が来るとは。今度も大丈夫だろうと、高をくくっていたんです」
 ボランティアが3日間、泥だらけになって水を吸った断熱材を撤去してくれた。自宅は大がかりな修繕が必要で、工事は年をまたぎ、費用は700万円にも。その間、2階だけの生活を余儀なくされた。

昨年11月、泥だらけになって浸水した断熱材を運び出すボランティア=川崎市中原区で(松平さん提供)

◆阪神大震災を機に鎮魂演奏を続けてきた

 松平さんは会社勤めのかたわら、トランペットを手に全国各地に出かけて演奏活動をしてきた。
 25年前の1995年1月も、神戸市での演奏を終えて、16日夜に川崎の自宅へ。翌朝、阪神大震災が起きた。少し前まで滞在した街も、ビルが傾く映像がテレビで流れていた。
 「生かされた命」との思いを胸に、99年から「1・17」の神戸で鎮魂の調べを響かせてきた。今年も神戸の中心市街地を一望できる公園で、復興支援ソング「花は咲く」を演奏。被災者の1人として、支援への感謝も込めたという。
 トランペットには元気づける力があると信じて、東日本大震災の被災地も訪れてきた。「私の音で、どんな思いを持ってもらえるか。共鳴できる響きを出せるかどうかが腕の見せどころ」と松平さん。
 自らも被災者となり、あらためて激励や助け合う大切さを知った。被災の現実に思いを寄せ、またトランペットを響かせたいと決意している。

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