調布市が新システム 災害状況「見える化」 昨年の台風19号を教訓に
2020年10月13日 07時06分
昨年の台風19号に伴う豪雨で、調布市が開設した十八カ所の避難所に約六千人が避難。四カ所が定員を大幅に上回るパンク状態になった。これを教訓に、避難所の混雑状況を瞬時に「見える化」する画期的な災害支援システムが産声を上げた。
システムの一つの目玉は避難所アプリだ。避難所の受付で渡されるQRコードを、家族やグループの代表者がスマートフォンで読み取り、何人で避難したのか人数を入力。すると、瞬時に避難所の混雑状況に反映され、市民に公開される仕組み。台風19号では、激しい風雨の中でかさを差しながら受け付けを待つ長い行列ができた。QRコードの導入で、受付時間の大幅な短縮が期待できる。
避難所内で新型コロナウイルスの感染者が出た場合は、避難者のメールアドレスに濃厚接触の可能性を通知する仕組みも加えた。
市の災害対策本部向けの情報共有システムも、工夫が凝らされている。
各避難所のスタッフや多摩川の堤防に待機する消防団員らが、専用アプリを入れたスマートフォンで本部と会話すると、音声が自動でテキスト化される。現場から送った写真は、地図上に表示される。昨年は避難所に市民が殺到していることを本部が把握するのに時間を要した。その反省から、「現場でいま何が起きているのか」をパソコン画面を開けば分かる仕組みを目指した。
柴田さんが新システムを開発するに至ったのは、一年前の体験があった。台風の襲来時、自宅マンションのすぐ近くまで浸水が広がり、市内の神社まで車で避難。神社に着くやいなやパソコンを広げ、会員制交流サイト(SNS)の「フェイスブック」に市内各地の避難所の開設状況を投稿し、公開した。友人らも続々と避難所の混雑状況の写真や浸水エリアの情報を寄せてくれた。それを一つ一つグーグルマップの地図に関連付けながら投稿を続けた。市民からSNSを通じてほぼリアルタイムで情報が集まるさまは、まるで「第二の災害対策本部」だった。
アクセスが集中し、つながりにくくなった市のホームページを尻目に、柴田さんの投稿は市民らから大きな反響を呼んだ。これが新システムの「原型」となった。
新システムは調布市側の要望を反映させながら改善を進めてきた。「使いやすさを最優先に考えて、基本的な機能はほぼそろえることができた。次の課題は実際の運用面だ」と柴田さん。その一つが、新システムの稼働で大量に入ってくるであろう情報を読み取る専任のスタッフだ。市総合防災安全課の担当者は「システムに習熟するため職員の訓練が要る。規模の大きな避難所訓練も必要だ」と話す。
柴田さんは新システムを「調布モデル」として全国に普及させたいと考えている。本当に、そうなるかもしれない。隣接する狛江市でも導入を検討しているほか、全国各地の自治体から問い合わせが舞い込んでいるという。
文と写真・花井勝規
◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。
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