「地域の希望に」と元の場所で復活へ 水戸で浸水の中華料理店<台風19号から1年>

2020年10月13日 10時21分

浸水被害を受けて、泥だらけになった店内。いすが天井のはりにひっかかっている=昨年10月16、水戸市で(柏さん提供)

 甚大な水害をもたらした昨年10月の台風19号が上陸し、12日で1年。水戸市でも常磐道水戸北スマートインターチェンジ(IC)が水没するなど大規模な河川氾濫が起きた。IC近くにあった中華料理店も被災したが、経営していた男性は「復興の証しとして、地域の希望になりたい」と新型コロナウイルスにも負けず、再起を図ってきた。(松村真一郎)

◆4メートルまで浸水 天井にいすの衝撃

 この中華料理店は、オーナーシェフの柏寛士ひろしさん(37)が切り盛りしてきた「柏ノ木」。2016年11月に開店し、地元の無農薬野菜や香港から仕入れたお茶など食材にこだわり、県内外から客が集う小さくてもキラリと光る店だった。
 それを台風19号が一変させた。昨年10月13日未明、近くの那珂川が氾濫する危険があったことから、柏さんは店の入り口に土のうを積み上げるなど備えていた。
 ふと気付くと、「ダー」と滝のような音が聞こえた。駐車場に止めていた車のライトで川の方向を照らすと、大量の水が堤防を越えているのが目に入った。身の危険を感じ、急いで安全な自宅に戻った。
 朝になると、店に隣接する水戸北スマートIC付近は濁った水の下に。市内では578棟の家屋が浸水し、2人がけがをした。店も約4メートル浸水し、水が引いて店に入れたのは4日ほどたってからだった。
 「店内は泥と食材が腐敗した臭いが充満し、頭上のはりにいすが引っ掛かっていた」。1年前の衝撃的な光景をそう振り返る。
 落胆の一方で、友人や常連客らが駆け付け、破損を免れた食器や調理器具の清掃などを手伝ってくれた。ただ、衛生面で不安があり、店をいったん解体した。

◆転地も考えたが…「地元への恩返しを」

 ここで再建しても再び氾濫したら浸水被害を受けかねない。移転を検討したが、適地は見つからなかった。店の土地はもとは祖父母の畑で、思い入れが深い。田園風景が広がり「目の前の畑で収穫した野菜を提供できるのが強み」だった。

店の再開を間近に控えて「地域の希望になる店にしていきたい」と話す柏寛士さん=水戸市で

 この地域は市街地から離れ、店舗も少ない。周辺住民から「自分たちの希望にもなるから、またここで店をやってほしい」との声に背中を押された。柏さんは「地元に恩返ししたい」という初心を思い出し、元の場所での再起を決意した。
 当初は7月に再開予定だったが、新型コロナで工事が自粛となり延期に。そこに、長梅雨で工期がさらに遅れた。ようやく10月28日にプレオープンするめどが立ち、11月中旬に本格再開する予定だ。
 新型コロナで、飲食業界は厳しい状況が続く。再開後、客数がどの程度になるのか分からない不安もある。それでも「ここでしか出せない料理を提供し、立派に復興したということを示したい」と力を込めた。

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