原発事故の国の責任、最高裁はどう判断? 福島被災者訴訟の仙台高裁判決に原告側、国、東電の3者が上告

2020年10月13日 18時30分
東京電力福島第一原発事故で福島など4県で被災した住民約3650人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟で、国と東電の責任を認めて計約10億1000万円の支払を命じた仙台高裁判決に対して、原告側と国と東電は13日、最高裁に上告した。国に原発事故の法的責任があるかどうかは、最高裁で判断されることになる。(片山夏子、小川慎一、小野沢健太)

「国や東電に上告せず早期救済を求めてきたが上告し、自ら果たすべき責任を先送りにした」と記者会見で憤る中島孝原告団長(中央)=福島市内で(片山夏子撮影)

◆原告弁護団「国に被災者救済の法的責任を確定させたい」

原告団長の中島孝さん(64)=福島県相馬市=と、原告弁護団事務局長の馬奈木厳太郎(いずたろう)弁護士らは13日午後4時半から、福島市内で記者会見した。馬奈木弁護士は「最高裁で国の法的責任を確定させて、国には原発事故の被害者に法的義務として救済する責任があるんだと、その結論を一日でも早く得るべく努力していきたい」と話した。

原告団長「救済を先送り、回避しようとする国と東電に怒り」

中島原告団長は「仙台高裁の判決でもあったが、国も東電も自ら果たすべき責任を先送り、ないしは回避しようとしたことが、はっきりと断罪された。今回上告にあたって、加害者として被害者救済に誠実に向き合うことを先送り、回避しようとする。そういう傲慢(ごうまん)な態度が現れていることに非常に怒りを感じる。いったいどれだけ時間をかければ、どれだけ裁判の結果をみれば、救済しようという態度を決めるのか。非常に情けなくも、腹立たしくもある状況です。被害を体験したものの責任としても状況を打開できるよう、最高裁できっちりと勝ち取りたい」と話した。

◆規制庁「国として最高裁に判断を仰ぐ」

原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁は13日午後2時半からの定例会見で、仙台高裁判決に対する上告について説明した。冒頭、児嶋洋平総務課長は「法務省より仙台高裁の上告受理申し立てをしたとの報告があった」と述べた。上告理由については、法務担当の布村希志子参事官が説明した。説明内容は以下の通り。
<国の上告理由> 9月30日の仙台高裁判決において、国の損害賠償責任が一部認められた。判決内容を慎重に精査し、関係省庁と協議した結果、国として最高裁の判断を仰ぐ必要があるとの結論に達し、本日上告受理申し立てをした。
本件訴訟では、一審の原告から事故前に国が東電に対し津波対策を講じさせなかったこと、国の規制権限の不行使、が国賠法上違法と主張されている。争点では、敷地高を超えるような津波を予見できたかという予見可能性について、また規制権限を行使して津波対策をさせていれば事故を回避することができたかどうか、結果回避可能性について。この主に二つの争点がある。
高裁判決は、予見可能性については長期評価は国自らが設置し多数の専門家が参加した機関の地震調査研究推進本部が公表したもので、相当程度に客観的、合理的根拠を有する科学的知見であるとして予見可能性を認め、さらに原告が主張する結果回避措置を講じても事故を回避できなかったことを主張立証するべきであり、これを尽くさない場合には結果回避可能性があったことを事実上推認されるところ、そのような主張立証をしていないとして結果回避可能性を認めた。結論しては、事故を回避させる津波対策を講じさせなかったこと、規制権限を行使しなかったことは国家賠償法上違法と判示した。
しかしながら国としては、予見可能性は、民間の事業者に津波対策を命じるには十分な科学的根拠がなかった。予見可能性の根拠としている長期評価、どこでも発生する可能性あるとしている部分は十分な科学的根拠をともなうものではなかったから予見可能性はなかった。結果回避可能性は、予測される津波と実際の津波は規模や対応がまったく異なり、仮に長期評価に基づいて東電に対策を命じても、事故は防げなかったから結果回避可能性もなかったと考えている。仙台高裁の判断は法令の解釈を誤るものと考える。
また、ほかの同種訴訟が多数継続しており国の責任についての判断が分かれている。仙台高裁を除く地裁レベルでは国の責任を認めるものと認めないものが七つずつ。この状況で、このまま仙台高裁判決を確定させると異なる裁判所の判断が併存する恐れがある。以上のことから最高裁に判断を仰ぐ必要があるとの結論に至った。今後、最高裁で国の主張が認められるよう関係省庁と適切に対処していきたい。

◆東電「総合的に判断し、上告」

東電は上告についてコメントを出した。「当社原子力発電力の事故により、福島県民の皆さまをはじめ、広く社会の皆さまにご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて心からおわび申し上げます。9月30日に仙台高裁で言い渡された判決について、判決内容を十分に精査した結果、総合的に判断し、上告を提起することにいたしました。引き続き、上告審においても丁寧に対応してまいります」

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