ボーナス、退職金は?非正規労働者の「不合理な格差」踏み込まず

2020年10月14日 05時50分
 ボーナスと退職金を非正規労働者に支払わないことを「不合理な格差とまでは言えない」とした13日の最高裁判決は、非正規と正社員との間にいまだ高い壁があることを知らしめた。働く人の4割近くに当たる2000万人超が非正規となる中、識者からは「同一労働同一賃金の流れに冷や水を浴びせる判決だ」と批判の声が上がった。(山田雄之)

◆「不合理であるとまで評価は…」訴え次々と否定

 「賞与に係る労働条件の相違は不合理であるとまで評価できない」「契約社員と正社員に退職金の支給で相違があるのは、不合理であるとまで評価することはできない」
 最高裁第三小法廷は判決で、大阪医科薬科大でアルバイトの秘書として働いた女性と東京メトロ子会社の契約社員として売店で働いていた女性2人の訴えを次々と否定。一部の支払いを命じた二審判決を見直し、「正社員の確保や定着のための制度」などとする企業側の主張をより重視して結論を導いた。
 労働政策研究・研修機構の2019年夏の調査では、「業務内容が同じ正社員がいる」と答えた非正規労働者のうち、37%がボーナスに、23%が退職金に不満を持っていることが明らかになっている。
 秘書だった女性の代理人弁護士は閉廷後の記者会見で、「政府が同一労働同一賃金を掲げる中で、流れに反する判断だ」と語気を強め、売店の女性の代理人弁護士は「格差是正の見直しを目的とする労働契約法旧20条の意義が問われる判決だ」と不満を述べた。

◆旧20条の「不合理な格差」訴えるも…

 今回の訴訟で原告は、それぞれの職場に旧20条が禁じる「不合理な格差」があったと主張した。企業はバブル崩壊後の1990年代以降、人件費を抑えるために非正規雇用を拡大。正社員との格差解消を図るため、民主党政権時代に同法改正案を成立させ、旧20条を新設した。
 その後、旧20条を根拠とする待遇格差訴訟が各地で相次いだ。最高裁は18年6月の判決で、手当など賃金項目ごとに趣旨を考慮した上で、職務内容の差や企業ごとの事情を考慮し、「不合理な格差」と言えるか判断すべきだとの大枠を示した。
 「同一労働同一賃金」を掲げていた安倍政権は最高裁判決直後、パートタイム・有期雇用労働法など働き方改革関連法を成立させた。労働契約法から旧20条は削除され、趣旨ごとパートタイム法8条に移された。

◆格差是正に踏み込まない判決

 働き方改革の中核とも言える「同一労働同一賃金」が今年4月に始まって以降、初めて示された最高裁判決。裁判官たちが「不合理な格差とまでは言えない」と判断する中、行政法学者出身の宇賀克也裁判官だけが、「正社員への退職金の性質の一部は、契約社員にも当てはまる。売店業務に従事する両者の職務内容に大きな相違がないことからすれば、契約社員に退職金を支給しないのは『不合理である』と評価できる」と反対意見を述べた。
 龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「欧州では同じ業務内容ならば、非正規労働者も正社員も同じ賃金になるのが原則。国際的に見たときに日本の格差は異常だ」と指摘。「人権救済のとりでとなるべき司法が、企業の経営判断を重視するあまり格差是正に踏み込まないならば、同一労働同一賃金は名ばかりになる」と警鐘を鳴らした。

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