<未来へ 10・25つくば市長選>(上)総合運動公園 雑草置き場に「年1億円」

2020年10月14日 07時13分

雑草が生い茂る総合運動公園用地=つくば市で

 うっそうと生い茂った草木が、時の流れを感じさせる。東京ドーム十個分ほどの総合運動公園計画の用地(つくば市大穂)。北側に隣接する高エネルギー加速器研究機構の整然とした施設群とは対照的だ。
 今は、市内で刈り取った雑草の仮置き場の役割しかない。敷地内にいた作業員たちは「総合運動公園?」と一様に首をひねり、記憶も薄れつつある。
 計画は、市原健一前市長が二〇一四年にぶち上げ、総事業費は三百億円以上。この巨額事業に市民の反発は強く、一五年八月の住民投票で反対が八割を占め、白紙撤回された。
 だが、市土地開発公社は、都市再生機構(UR)から六十六億円で用地買い入れを終えていた。塩漬けされている用地は、市政運営の大きな負担となりつつある。URが納めていた固定資産税がなくなった上、毎年生じる借入金の金利三千五百万円と合わせ、市議会では「年間、一億円の損失」ともいわれる。
 一六年の前回市長選で初当選した五十嵐立青市長は、売買契約の解除を求めてURと交渉したが、URが応じず断念。そこで一九年、売却を前提に民間事業者から事業提案を公募したところ、一社から大規模商業施設や物流倉庫、介護老人保健施設の整備などの提案があった。
 市議会は調査特別委員会を設置し、提案内容を検討。今年九月に出した中間報告では、事業者の提示額が四十億円と取得額を大幅に下回っていることもあり、結論には至っていない。
 五十嵐市長は今月六日の定例会見で、この間、事業者側が提案を取りやめたことを明かし、「今は売却する方針はない」と断言。用地の活用については、再選されれば、同時に改選される市議たちと引き続き協議を続け、市民の意見も踏まえて方向性を見いだしていく考えを繰り返した。
 結論を先延ばしすればするほど、有効に利用されないまま、金利負担だけがのしかかる。
 保有する市土地開発公社との契約では、二五年三月末までに市が用地を買い直すことになっている。公社が四銀行から借り入れた取得費用の返済期限が二四年三月末に迫り、連帯保証人の市は、費用を捻出するため、基金の積み立てを続けている。
 市財政への影響について、五十嵐市長は「非常に懸念している」と認め、「きちんと結論を出していきたい」と語る。
 計画に反対し、住民投票を実現させた市民グループ「総合運動公園建設の是非を住民投票で問うつくば市民の会」の共同代表を務めた山本千秋さん(80)は「前市長の独断による負の遺産だが、用地のあり方の検討が遅れているという印象」と指摘した上で、新市長に要望する。
 「意見が絞り込めるような、しっかり考え抜いたアンケートを作り、市民に問うのも一つの方法。市民の気持ちがどこにあるのか、見誤らないでほしい」
     ◇
 つくば市長選が十八日に告示され、二十五日に投開票される。つくばエクスプレス開業から十五年が過ぎ、市の人口は今も右肩上がりだ。新市長は、未来へ向けてどうかじ取りをしていくのか。市が抱える課題を三回にわたって追う。(この連載は林容史が担当します)
<つくば市総合運動公園計画> 公式記録が計測できる陸上競技場を目玉に総合体育館、屋内プールなどの施設を2024年度までに段階的に整備する計画。つくばエクスプレスつくば駅から約8キロ。14年、都市再生機構の約46ヘクタールの土地を、市が取得する議案を市議会が可決し、市土地開発公社が購入した。

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