要介護者の「総合事業」利用 国が検討 「保険給付外し」進む恐れ

2020年10月14日 07時49分
 要支援だった高齢者が要介護1以上の認定を受けた後も、介護予防や日常生活を支援する自治体の「総合事業サービス」を引き続き使えるようにすることを、厚生労働省が検討している。介護保険サービスの利用を総合事業に割り振ることで、膨らみ続ける給付費を抑制する狙いもあるようだ。ただ、受け皿が整っていない自治体も多く、高齢者が必要な支援を安心して受けられる態勢づくりが求められている。 (五十住和樹)
 現行の総合事業は、要支援1、2の人などが対象。各市区町村が訪問型や通所型などのサービスの運営基準、単価などを決め、住民ボランティアが担い手になることもある。利用者が要介護になった場合は介護保険の給付に移るが、厚労省は総合事業の利用を継続できるように省令を改正する方針。来年四月からの実施を予定している。
 改正案によると、要介護者が総合事業を使えるのは、本人が希望し、市区町村が認めた場合。介護給付も選べる。同省の担当者は「要介護者のサービス選択の幅を広げるのが目的。給付を抑制するつもりはない」と説明する。
 ただ、介護給付費は右肩上がりだ。二〇一五年に導入された総合事業のガイドラインには(1)多様なサービスの提供(2)高齢者の社会参加・地域での支え合い−という目的のほか、「費用の効率化を図る」と介護費用削減の狙いも明記。一七年四月までに要支援者の訪問介護と通所介護が保険から総合事業に移行したこともあり、今回の改正を「さらなる保険給付外しにつながる」と見る向きもある。
 公益社団法人「認知症の人と家族の会」は改正案への緊急声明で「どれだけ利用者や家族の自由意思が尊重されるか」と懸念。要介護1や2には認知症の人も多いため「専門的なケアを受け、少しでも病気の進行を遅らせるのが重要。要介護者を総合事業に留め置くのは介護保険の受給権侵害につながる」と訴える。
 介護福祉士などの資格を持つ専門スタッフが全国一律の基準で提供する介護サービスに対し、総合事業は自治体間でサービスの量や質に格差が生じやすい。同省の社会保障審議会では昨年、要介護1と2の人への生活援助などを総合事業に移す案も出たが、受け皿が整っていない地域もあることなどから見送られた。
 「コロナ禍での高齢者ケアは、ボランティアではなく、感染防止対策を講じたプロが担うべきだ」。東京都内で九月に開かれた介護関係団体の会合で、埼玉県新座市で介護事業を営む女性は総合事業の危うさを指摘した。
 総合事業の訪問型サービスを担うボランティアや研修修了者を十分に確保できない自治体は多い。東京都八王子市の市民団体の女性は「訪問介護事業所のプロのヘルパーが総合事業を引き受けている」と現状を明かす。同省の担当者はこうした実態を踏まえ、「今後も市区町村が総合事業の担い手を養成、確保できるよう支援していく」と話す。

◆「チェックリスト」で参加

 要介護認定を市区町村や地域包括支援センターに申し込むと、比較的軽い人は認定の審査ではなく、市区町村の判断で「基本チェックリスト」を受ける場合がある。リストは「いすから何もつかまず立ち上がる」「茶や汁物でむせることがある」など25項目。該当項目によって、総合事業の訪問や通所型サービスを受けたり、住民主体の「通いの場」で茶話会や体操をしたりする一般介護予防事業に参加する。

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