アビガン近く承認申請、最優先審査へ 新型コロナ陰性まで2.8日短縮

2020年10月15日 05時59分
 富士フイルム富山化学は近く、新型コロナウイルス感染症の治療薬として「アビガン」の薬事承認を申請する。藤田医科大(愛知県豊明市)による特定臨床研究の中間解析結果で「有効性が示されていない」と報じられ、一時、「効かないのでは」というイメージが広まったが、同社の臨床試験(治験)で有効性が示された。ただし、軽症者向けで、症状が劇的に改善するわけではない。(藤川大樹)

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補「アビガン」(富士フイルム富山化学提供)

◆「投与で早期に症状改善」発表

 富士フイルム富山化学は3月末から、重篤でない肺炎症状のある新型コロナ患者156人(20~74歳)を対象に治験をしてきた。その結果、アビガンを投与したグループは11・9日(中央値)でPCR検査で「陰性」になった。投与しなかったグループの14・7日より、2・8日短かった。
 同社は9月23日、「アビガンを投与することで早期に症状を改善することを、統計学的有意差(意味のある差)をもって確認できた」と発表した。安全面でも懸念される問題はなかったという。

◆「有効性不明」独り歩き

 新型インフルエンザ治療薬として開発されたアビガンはウイルスの増殖を抑える効果があり、治験の結果が出る前から注目の的だった。緊急事態宣言発令中の5月4日、安倍晋三首相(当時)は記者会見で「今月中の承認を目指したい」と表明した。

記者会見で、5月中にアビガンを承認する方針を説明した安倍前首相=5月4日、首相官邸で

 厚生労働省幹部によると、描かれたシナリオはこうだった。アビガン投与による患者のウイルス量の変化を調べる藤田医科大の「特定臨床研究」の中間解析結果に基づいて承認―。だが、政府が期待した有効性は示されず、加藤勝信厚生労働相(同)は記者会見で「独立評価委員会から科学的に評価することは時期尚早との考え方が示されている」と5月中の承認をあきらめた。
 この研究の最終結果は「ウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しなかった」。有効性は不明という意味だが、「『有意差なし』という報道が独り歩きしてしまった」と東京脳神経センター整形外科・脊椎外科部長の川口浩氏は解説する。

◆学会は軽症患者に「弱く推奨」

 新型コロナ治療薬の承認審査は最優先で行われる。薬事承認の申請後、早期に審査を終え、11月にも承認の方向だという。承認されれば、トランプ米大統領も使用した抗ウイルス薬「レムデシビル」とステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」に続き、国内3例目の新型コロナ治療薬となる。
 そのアビガンも回復を早める効果はあるが、新型コロナの特効薬ではない。日本集中治療医学会などはガイドラインで、軽症患者へのアビガンの投与を「弱く推奨」し、中等症と重症の患者への投与は現時点では勧めていない。
 アビガンの名称は鳥インフルエンザの英語(avian influenza)にちなむ。インフルエンザ治療薬としての承認は2014年3月。動物実験で胎児に奇形を起こす催奇形性が確認されており、妊婦らは使えない。現在、一般に流通はしておらず、新型インフルエンザ流行を念頭に政府が備蓄している。

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