感覚信じて 難しい役 あす公開「スパイの妻」 主演の蒼井優

2020年10月15日 07時25分
 第77回ベネチア国際映画祭で、監督賞(銀獅子賞)に輝いた黒沢清監督の「スパイの妻」が16日に公開される。主演の蒼井優(35)は「受賞作に自分が関わっているのが恐れ多い」と謙遜しつつ、「難しい台本でどう演じるかいろいろ考えたが、自分の中にある感覚を信じて監督についていった」と撮影を振り返った。 (藤原哲也)
 太平洋戦争開戦前の神戸。高橋一生演じる優作は貿易会社を営み、蒼井演じる妻の聡子と幸せに暮らしていた。ところが、優作は仕事先の中国東北部で恐ろしい国家機密を知ってしまう。正義感から優作は、この事実を世に知らしめようと動き始めるが、聡子は理解できない。それでも、優作への愛が聡子を徐々に突き動かしていく−。黒沢監督ら三人によるオリジナル脚本の作品で、NHKのBS8Kで六月に放送されたドラマの映画版だ。
 夫婦愛の物語とサスペンスが同時に展開し、時代設定に合わせたせりふ回しが多く、蒼井は常に台本と向き合い格闘していたという。役作りに関しても「監督から『分かりますよね?』と言われ、『はい』と言わないといけない空気だった。最初は分からなかったが、(振り返ると)想像したことと違ってはなかったのかな」と語る。

映画「スパイの妻」から。蒼井優(右)と高橋一生

 ドラマを含めて黒沢作品への出演は三作目。初の主演で長い時間を共にしたことで、黒沢組独特の雰囲気や演出方法が印象に残ったという。驚いたのは現場の静寂。整然と進む撮影に「他のキャストの方と『美術館に来たみたいだね』と話していた。緊張感のある現場でした」。
 せりふ回しを監督自身が声に出して説明したり、台本にはない動きが加わったりすることもあった。「今までやってきたどのパターンの芝居が通用するかが考えても難しく、特別個性的な映画だった。とにかく勉強になったのが一番の感想。自分の中の足りてる部分、足りない部分がはっきりしたので、それらを自分の個性として育てられたら。それが何かは言えないが、(今後の)映画で答えを出していきたい」
 撮影は昨年秋。蒼井自身も結婚後、しばらくしてからの撮影だった。その影響について聞くと、「今回演じた夫婦像とうちの夫婦像は全く違うが、伴侶がいる感覚を想像しなくていいので、一歩踏み込んだ状態から役作りできた」。そう幸せそうに語ったと思ったら、「でも、そんなにないかも。もっと夫婦の時間が長かったらきちんと感覚が出ると思うが、まだ言うほど…ですね」。ちゃめっ気たっぷりに笑う表情は、やはり幸せそのものだ。
 女優として確固たる地位を築きつつあるが、「まだ、何でも演じたい」と意欲を見せる。「常に自分の感覚は新しくなっている。今、聡子を演じたら全然違うものになるだろうし。だから、やれるならいろんな役に挑戦していきたい」
 出演はほかに東出昌大、坂東龍汰(りょうた)、恒松祐里、笹野高史ら。

ベネチア国際映画祭銀獅子賞のトロフィーを披露する黒沢清監督=東京都内で


関連キーワード

PR情報

芸能の新着

記事一覧