「海洋放出は絶対反対」全漁連が政府に要請 福島第一原発の汚染処理水巡り

2020年10月15日 20時30分
東京電力福島第一原発で発生した汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムを含む水の処分を巡り、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は15日、経済産業省と環境省を訪れ、政府が最有力視している海洋放出に対して「わが国漁業者の総意として、絶対反対。慎重な判断を求める」と2省の大臣に要請した。(小野沢健太、小川慎一)

梶山経産相に対して、全漁連の岸会長は処理水の海洋放出に「反対」と伝えた=15日、東京都千代田区の経産省で

汚染水はトリチウム以外のほとんどの放射性物質を取り除ける多核種除去設備(ALPSアルプス)で浄化処理した後、原発構内のタンクに保管。処理水の約7割は浄化不十分で、トリチウム以外の放射性物質が国の排出基準を超えて残っている。東電は処分に向けた再浄化の試験中で、15日の会見では基準を下回る効果があったと発表した。
東電によると、2022年秋ごろには計画しているタンクの保管容量が満杯になる見通し。放出処分となれば、必要な施設の整備に2年はかかるため、菅義偉首相は処分方針について「できるだけ早く決めたい」としている。
今回の要請には、福島県漁連の野崎哲会長も同席した。午後1時半から環境省で小泉進次郎環境相に、その後は経産省で梶山弘志経産相と面談し、要請書を手渡した。経産省での岸会長の発言は以下の通り。

◆全漁連会長「海洋放出になれば、風評被害の発生が必至」

ALPS処理水の取り扱いについて、全国の事業者の総意として反対を決議したところです。10月8日に意見を申し上げる機会をいただいて、その趣旨や思いを述べさせてもらいました。今日はそれを踏まえてですね、経緯や考え方を申し上げたいと思います。
基本的にこのALPS処理水の問題は、福島の復興には非常に大きな課題ですし、福島だけでなく全国の事業者、それから海外のインバウンド、海外市場などさまざまな分野にとって非常に大きな課題であると認識しています。
早いもので原発の事故から10年になろうとしている。今日は福島の会長もいらっしゃっているところですが、これまで10年、ほんとに血のにじむような努力を積み重ねてきました。そういう中で、我々もこれからもよくなるように、12月には漁業法の改正もあって大きな課題もあったわけですが、我々も含めて一生懸命頑張っていこうというさなかでありました。こういう中で、ALPS処理水の取り扱いは国の大きな重要課題であることはもちろん承知していますが、しかしながら、具体的にその処理水が海洋放出されるということになるなら、これまでの我々の努力や、これから将来を見越して漁業法を改正してしっかり頑張ろうとする思いが挫折しかねない。そういう大きな心配をしています。
海洋放出ということになれば、当然ながら風評被害の発生が必至であり、ひいては全国の漁業者は挫折感を含めて将来の漁業の展望を壊しかねない。そんな懸念をしております。
どうか国においては、漁業者の思い、これまで努力した経緯、また我々もサブドレンの問題では苦渋の決断でありましたが、福島の事故処理という観点で苦渋の決断でしたが、協力した経緯があります。今、漁業者がしっかりと頑張ろうとしている努力が水泡に帰さないように是非、慎重な判断をしていただきたい。
先般の意見交換会でも申し上げましたが、海洋放出につきましては全国の漁業者の総意として反対であると改めて申し上げて、慎重な判断を求めたい。どうぞよろしくお願いします

処理水の海洋放出に絶対反対とした要請書を梶山経産相に手渡す全漁連の岸会長(左から3番目)=15日、東京都千代田区の経産省で

◆梶山経産相「風評の影響に徹底的な対応が不可欠」

面談は冒頭が報道陣に公開された。梶山経産相の発言は以下の通り。
ご要望に対しては真摯(しんし)に受け止めさせていただきます。全漁連の皆さまには事故以降、政府の廃炉対策に大変なご理解とご協力をいただいていることには改めて感謝申し上げます。また先般行われた意見交換の場に岸会長にお越しいただきまして、本日は会長の皆様と福島の会長の皆様とご来庁いただいたということで重ねて感謝申し上げます。
本日は、ALPS処理水を海洋放出する場合の風評の影響が強く懸念されること、国民の理解を得られないALPS処理水の海洋放出には反対であること、政府において議論を深め慎重な判断をすること、についてご要望をいただきました。
廃炉汚染水対策の着実な実施は原子力災害からの復興の大前提であります。これを遅延させないために日々増加しているALPS処理水の取り扱いについて、政府として責任を持って早期に方針を決定していくことが必要であると考えています。
決定にあたっては特に、ご懸念されている風評の影響について政府方針の決定前後を問わずに徹底的な対応を取ることが不可欠であると認識しています。政府におきましてはこれまで立地自治体、そして農林水産業者との意見交換、意見を伺う場でいただいた意見、書面で募集した意見を取りまとめ整理しているところでありまして、本日いただいたご要望も重く受け止めた上で検討を深めて参りたいと思います。

汚染処理水の海洋放出に絶対反対とした要請書を小泉環境相に渡す全漁連の岸会長(右から3番目)=15日、東京都千代田区の環境省で

◆福島漁連会長「生業を続けていくという意味で反対」

福島県漁連の野崎哲会長は、環境省の面談で以下のように発言した。
我々7月に国の意見聴取で反対であることを表明しました。全国の漁業者を代表して岸会長が10月8日に同様の意見表明をした。福島の漁業は来年4月からの本格操業を目指して、一丸となって進んでいる。後継者の方々もみなやる気になっている。これまでのさまざまの経緯の中で、サブドレン、地下水バイパスと、漁業者の了解なしでは海洋放出は行わないという約束があるもとで、われわれ進んできている。
ただ、われわれ福島県人としては、福島第一の事故の場の廃炉の貫徹、安全なる廃炉の貫徹こそ、ふるさと復興の第一条件だと思っています。国の方も慎重に審議、議論のうえ、さまざまな施策を検討していただきたい。われわれ漁業者の立場は、あそこに土着して住むのが、われわれの生業を続けていくという意味で反対であるということを、ご理解いただきたい。

◆小泉環境相「思いを受け止めたうえで決定をしなくては」

岸会長らと面談した小泉環境相の発言は以下の通り。
環境省は、福島の復興については中間貯蔵、除染が大切な仕事になっています。岸会長、野崎さんからも地元福島を代表されるような思いを聞きましたが、我々としても廃炉、これをいかに着実に安全に進めることができるのか。こういったことを考えないといけない。
会長から話があったとおり、ALPS処理水の取り扱い、こういったことは国家的にも非常に大きな課題、避けることができない課題という中で、いかなる決定があったとしても、みなさんの思いをしっかり受け止めたうえでの決定をしなくてはならない。決定をされたあかつきには、われわれできることを全力でやっていきたいと思いますし、環境省としても福島、そして全国の漁業者の皆さまに信頼、ご理解をいただけるように、たゆまぬ努力を続けていきたいと思っている。これからも引き続きコミュニケーションをとりながら、しっかりと復興に向けて国民一丸となって、漁業者全体も心を一つにして前に向いていけるような努力を環境省としてもしますので、これからもよろしくお願いします。

関連キーワード

PR情報

主要ニュースの最新ニュース

記事一覧