あまりに大きい賃金格差 是正の道のり遠く 非正規訴訟の最高裁判決5件

2020年10月16日 05時50分
 非正規労働者が正規労働者との不合理な格差を縮めるように求めた訴訟5件の最高裁判決が、15日までに出そろった。諸手当の支給を認めた一方で、金額が大きなボーナスや退職金を支給しないことは「不合理とまではいえない」と判断。手当など企業への影響が小さい項目では非正規の待遇改善が進む可能性は出てきたが、既に大きく広がる格差是正に向けた道のりは長く、険しい。(渥美龍太、岸本拓也、山田晃史)
 「手当の格差を違法と最高裁が判断したことは評価できる」。15日に日本郵便の契約社員が原告となった訴訟3件の判決後、都内で記者会見した水口洋介弁護士は強調した。ただ「(13日の別の判決では)賞与(ボーナス)と退職金の格差を不合理と認めなかった」と不満も付け加えた。
 格差の是正が注目されている背景には、政府が一昨年、仕事の内容や責任の重さなどが同じなら同じ賃金を企業に支払ってもらうよう法律を改正したことがある。非正規の待遇底上げが目的だが、政府が示した不合理な格差の基準はあいまいな内容も多く、「企業側も是正のためにどう動くべきかよく分からない」(中小企業団体幹部)のが実態だ。このため経営者は、関連の裁判を注視している。
 日本総研の山田久氏は「金額の大きなボーナスや退職金で踏み込んだ判断を出さなかったのは、中小企業への影響が大きすぎると判断したのでは」と推測。「是正は金額の小さな手当から。本格的に進めるには時間が必要」と見通す。
 正規、非正規の格差はあまりに大きい。国税庁の調査では、昨年の平均給与は正規の503万円に対し非正規は175万円とほぼ3分の1。新型コロナウイルスの直撃を受けた飲食業などの非正規は今、収入が激減する事態が相次ぐ。
 今後の焦点は判決を受けた企業の動きになる。日本大学の安藤至大教授(労働経済学)は「経営者が判決を『正社員以外にボーナスや退職金を出す必要はない』などと一律にとらえるのは間違い。手当も含めて個別ケースごとの判断だ」とくぎを刺した。

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