<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>私費で徹する支え役 神田連雀亭・加藤伸オーナー

2020年10月16日 07時52分

加藤伸オーナー(中央)を囲む(左から)三遊亭好吉、林家つる子。(右から)桂笹丸、神田紅佳

 二つ目と呼ばれる若手芸人を、身銭を切り支えている。神田連雀亭のオーナー、加藤伸さん(76)。
 「地域活性化をしたかった」との思いから二〇一四年十月十一日、東京・神田須田町に二つ目専用の寄席を立ち上げた。高座をこしらえ、楽屋や木戸を整え、看板やのぼりをそろえるなどの初期投資は、すべて持ち出し。ただし運営には、一切口出ししない。
 出演できるメンバーは、現段階で落語家、講談師、浪曲師約百二十人。 
 「六人の番頭制度で運営しています。大番頭は笑福亭羽光(うこう)さん(他は三遊亭天歌、三遊亭好吉、立川寸志、宝井梅湯、玉川太福(だいふく))。トイレットペーパーなどの備品がなくなると連絡帳に書いてもらって、それを私が補填(ほてん)して」と、加藤さんは支え役に徹する。
 夜は貸席(かしせき)(賃料八千五百円。現在は入場規制を鑑み五千円)で、それが神田連雀亭の総収入になる。日中は毎日午前十一時半から「ワンコイン寄席」、午後一時半から「きゃたぴら寄席」が開かれるが、入場料はすべて出演者のもの。場所代、光熱費、修繕費などランニングコストはすべてオーナーが負担している。若手にとって、こんなありがたい勉強の場はない。
 「お正月にはメンバー全員、お年玉がいただけるんです。本当にありがたくて」と感謝の思いを伝えるのは、取材日に出演していた林家つる子。新型コロナウイルス対策にも出費は惜しみなく、高座と客席を巨大なアクリル板で仕切り、木戸には自動計測検温計を設置した。
 「演者さんだけで運営しているから、なるべく手間を省けるように」という思いから、手動式の体温検査計を選ばなかった。
 芸人による寄席運営は「うまくいっている」と及第点。「番頭さんが決めたことを、私は許可するだけ。責任は持つから、自分たちの好きなようにやりなさいって言っています」 (演芸評論家)

神田連雀亭の外観

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