学術会議が千人計画に協力は「悪質なデマ」 甘利氏がブログ訂正も誤情報が拡散

2020年10月16日 15時46分
 日本学術会議の会員候補を菅義偉首相が任命拒否した問題をめぐり、自民党の甘利明税制調査会長が「中国の軍事研究につながる『千人計画』に学術会議が積極的に協力している」という趣旨の自身のブログを「間接的に協力しているように映ります」と内容を書き換えていた。加藤勝信官房長官は協力の事実を否定。この記事を引用して、学術会議を批判する声がネット上に多く上がっていたが、根拠が誤っていたことになる。学術会議側は「悪質なデマだ」と反論している。(望月衣塑子、三輪喜人)

甘利明氏の8月6日のブログ

◆中国に「積極的に協力」

 ブログは、今年8月6日の「国会リポート第410号」。記事の中で、「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『外国人研究者ヘッドハンティングプラン』である『千人計画』には積極的に協力しています」と指摘した。
 千人計画とは、海外から研究者を高額な年俸で招いて「研究者の経験知識を含めた研究成果を全て吐き出させるプラン」とした上で、「中国はかつての、研究の『軍民共同』から現在の『軍民融合』へと関係を深化させています。つまり民間学者の研究は人民解放軍の軍事研究と一体であるとう宣言です。軍事研究にはくみしないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか」と書き込んだ。

◆「反日組織」と拡散

 内閣官房参与に就任した高橋洋一・嘉悦大教授(フォロワー数、約32万7千人)が10月3日にこのブログをツイッターで紹介するなどして、インターネットで拡散。ネットのニュースサイトでは「こんな明確な話があるとは」「利権団体だ」「『防衛研究は認めないが、中国の軍事研究には参加する』という反日組織」「中国に情報を流している」などの学術会議を批判するコメントが書き込まれ、SNSでも拡散した。
 11日放送のフジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に甘利氏が出演。ブログ記事を読み上げられ、甘利氏が「千人計画は、日本の学者を厚遇で引っ張って研究と知識を全部吸い取ろうという計画。日本の研究者も十数人参加している。学術会議は中国に警鐘を鳴らすべきだ」と語っていた。

◆「そのような事実ない」

 5月4日付の読売新聞の記事でも、甘利氏の発言として「学術会議は軍事研究につながるものは一切させないとしながら、民間技術を軍事技術に転用していく政策を明確に打ち出している中国と一緒に研究するのは学問の自由だと主張し、政府は干渉するなと言っている」と書かれていた。だが、この点について学術会議の担当者は、「そのような声明を学術会議が出した事実はない」と反論している。

日本学術会議=東京・六本木で

 千人計画と学術会議の関係を強調してきた甘利氏。しかし、加藤官房長官は12日の記者会見で、学術会議と千人計画との関係を「多国間、2国間の枠組みを通じた学術交流を行っているが、中国の『千人計画』を支援する学術交流事業を行っているとは承知していない」と否定した。
 甘利氏は同じ12日に新しいブログの記事を投稿。「積極的に協力しています」という部分を、「間接的に協力しているように映ります」と変えると表明した。また元の記事にあった「軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか」の表記も「日本限定なんでしょうか」と変わっていた。(甘利氏の8月6日のブログ10月12日のブログ

◆「適切でないなら訂正」

 甘利氏は14日午後、報道陣の取材に、「私にはそう(学術会議が千人計画に協力しているように)見えたが、それが適切でないというなら、そう見えるというふうに訂正した」と説明していた。
 2015年9月に学術会議が中国科学技術協会との間に人事交流などを行う覚書を結んだことを根拠に「権威主義国家との研究協力は相当慎重にやってもらわなければ、日本国民のリスクになる」と釈明した。
 一方、学術会議の担当者は、「軍事研究に関する学術会議の声明は、日本だけに限定しているというものではない。甘利氏の指摘する、覚書は千人計画に関する内容ではなく、実際には表敬訪問が行われた程度で、覚書を基にした事業は現時点ではない」と否定している。

◆まだ信じている人が…

 甘利氏のブログ記事が修正されても「学術会議が中国の軍事に深く関与している」と断定する言説はネット上でその後も拡散されている。
 15日に国会内で開かれた野党合同ヒアリングに出席した学術会議の大西隆元会長は、「千人計画」に学術会議が協力しているとの見解に対し「全く関わりがない。悪質なデマが流されている」とした上で、影響力の大きさをこう指摘した。「まだデマを受け取ったままの人がいる」

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