譲歩しない政府、学術会議の不満強く 与党内に長期化への懸念<学術会議の任命拒否>

2020年10月17日 05時50分
 16日に行われた菅義偉首相と日本学術会議の梶田隆章会長の会談。梶田氏は新会員任命拒否問題で、理由の説明と除外された6人の任命を求める要望書を手渡したが、初顔合わせということもあって踏み込んだやりとりはなかった。だが、譲歩するつもりはない政府と、学術会議の溝は深い。「学問の自由」の侵害との指摘もある問題を巡る混乱は収束の兆しが見えず、与党内には長期化への懸念も広がり始めた。(生島章弘、梅野光春、望月衣塑子)

◆任命拒否の理由説明求めず

 「要望書は手渡したが、踏み込んだお願いはしなかった」。梶田氏は首相との会談後、官邸で記者団に語った。梶田氏によると、会長就任のあいさつという位置付けで任命拒否の理由の説明を求めず、首相も言及しなかった。梶田氏は今後の対応について、記者団に「しっかり検討するが、具体的な日程は未定」と話すにとどめた。
 梶田氏の姿勢からは、政府との決定的な対立は避けたい思いが見え隠れする。

◆刺激するより理解深めてもらう

 15日夜、会員らに届いた梶田会長名のメールは、任命拒否問題に「責任を持って対応する」と言及。同時に「会議の役割や活動について社会に伝えていくことが必要だ」とつづられていた。政権を刺激して学術会議への批判を強める事態を招くより、組織への理解を深めてもらう方が建設的との考え方がにじむ。
 ただ、拒否された6人の専門分野である人文社会系の部会に属する北海道大の宇山智彦教授は「要望書に書かれている通り、首相は学術会議法に基づき拒否を撤回をすべきだ。政府は、異なる意見を出すことが学問の発展につながることを理解していないのではないか」と強調。なお会議内に不満は残る。

◆官邸の人事介入、安倍政権から

 官邸による会員人事への介入は菅政権で明らかになったが、安倍政権から始まっている。2016年以降、交代する人数を上回るリストを事前に作成するよう要求するようになった。
 政府関係者によると、一連の対応に関与した杉田和博官房副長官は「任命権は首相にある。推薦通りに認めることの方がおかしい」というのが持論だ。
 学術界の反発をよそに、政府は21年度予算編成に向けて年間10億円の予算や50人の事務局体制の規模が妥当かを検証する方針。自民党も組織形態見直しの検討を始め、民間への移行も排除しないと主張するなど「圧力」をかけ続ける。
 もっとも、与党内も強気一辺倒ではない。事態が長期化して政権への批判が高まれば、1年以内に行われる次期衆院選への影響は避けられないという懸念が広がりつつある。

◆「支持率あっという間に下がる」

 自民党幹部は「国民の反感は強い。内閣支持率は40%ぐらいまでアッという間に下がる」と危惧。閣僚経験者は「早々に謝って任命拒否を撤回すべきだった。日に日に収拾がつかなくなっている」と頭を抱える。
 より危機感を募らせるのは、憲法へのこだわりが強い公明党だ。関係者によると、任命拒否が明るみに出た後、山口那津男代表ら幹部は首相に「慎重に考えた方がいい」と重ねて忠告した。しかし、対応は変わらず、むしろ混乱は拡大。ベテラン議員は「憲法は学問の自由を保障している。首相や官邸が価値判断して『この人はダメだ』と言ってはいけない」と批判する。

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