<食卓ものがたり>ほっくり広がる秋の味 クリ(長野県小布施町)

2020年10月17日 06時55分

イガからこぼれそうなクリの実。木から落ちた実を拾って収穫する=長野県小布施町で

 北陸新幹線が発着するJR長野駅から、ローカル線の長野電鉄に乗り換えて三十分余り。小布施駅で降りて数分歩くと、高さ三〜五メートルの木が立ち並ぶクリ畑が次々に現れた。
 クリの産地として有名な長野県小布施町。栽培の歴史は古く、江戸時代には将軍家にも献上されている。
 サッカーコート五面分に当たる広さ三・五ヘクタールの畑で約千本を栽培する平松幸明さん(53)によると、クリが特産になった理由は二つ。小布施は、酸性の水が流れる松川の扇状地として形作られた。程よい酸性を帯びた土壌が実を甘くするのだという。もう一つ、米作りには向かない水はけの良さもクリ栽培に適している。
 「恵まれた土地に加え、研究にも余念がない」と平松さん。例えば、木全体にまんべんなく日光が当たると収穫量が上がり、品質も良くなるとして「空気が冷え、切り口から病気になることが少ない冬場はずっと剪定(せんてい)をしている」と明かす。害虫を寄せ付けないよう下草も丁寧に刈り込む。「いろいろやって、うまくいかないこともある。そしたら、また考える。それが面白さかな」
 木と木の間が広い農園は隅々まで柔らかな秋の日差しが降り注ぐ。収穫はイガが自然に落ちるのを待って九月上旬に始まり、筑波、銀寄(ぎんよせ)など採れる品種を替えながら今月下旬まで続く。昨年は十月の台風19号で被害を受けた農家もあったが、「今年は豊作」と笑顔だ。
 平松さんから買ったクリの実は一粒四センチ前後とどっしり、つややか。早速、付属のレシピを参考にゆでてみた。ほっくりとして、クリ独特の甘みがある。「なるほど、これが小布施のクリか」。口の中に秋が広がった。文・写真 佐橋大

◆買う

 小布施町では、生産者が直接、個人や各地の菓子店などにクリを販売するケースが多い。平松さんの農場も生グリ=写真=を通信販売しており、「クリの王様」とも称される銀寄の2Lサイズは1キロ2700円など。(問)平松農場=電026(247)3338。
 町振興公社も町内の店舗「小布施屋」のほか、オンラインストア(「小布施屋」で検索)で生グリを販売。栗菓子店も多く、200年以上前から続く「塩屋櫻井」など6軒が、栗かのこなどを作っている。

関連キーワード

PR情報

ライフの最新ニュース

記事一覧