<法律お助け隊 坂本雅弥弁護士>「元妻に全財産」と返済拒む知人

2020年10月17日 07時00分
<お悩み> 知人に200万円を貸した時、公正証書で契約書を作りました。返済日に連絡したところ、知人が「返済するお金はない」と言います。預金が500万円ほどあったようですが、先日離婚した妻に財産分与で全て渡したそうです。知人は体調を崩し、無職です。必ず返してもらうために契約書を作ったのに納得できません。(東京都・男性45歳)

◆過大分与ないか検討を

<お答え> 公正証書で作った金銭消費貸借の契約書に、「履行を怠った場合は強制執行に服する」という文言(強制執行認諾文言)があれば、裁判をしなくても強制執行できます。
 ただ知人に財産はないようです。債務者が債権者の利益を害することを知りながら、財産の譲渡などで返済ができなくなった場合、債権者は譲渡行為を取り消す権利があります。債権者取消権(民法四二四条)といい、債権者による財産保全の方法として認められています。
 さて債務者が離婚の際に支払った財産分与について取消権を行使できるのでしょうか。判例では、離婚時の財産分与について原則、取消権の行使を認めていません。財産分与の趣旨は、夫婦が婚姻中に有していた財産を分配、相手の生活を維持させることなどにあります。そのため財産分与の額や分配方法は、夫婦が協力して得た財産の額などを考慮して決めるべきで、当然には取消権は認められません。
 ただ財産分与で債務者が弁済不能な状態になったら、例外なく取消権が認められないのは不当と考えられます。判例は、財産分与の額が不相当に過大で、財産分与に見せかけた財産の処分と認められる場合は、取消権を行使できると認めたこともあります。
 相談では、債務者はほぼ全財産を妻に渡したとあり、まずは相手への財産分与額が妥当か検討してみることが必要です。仮に財産分与した金額に過大な部分があった場合、過大な部分のうち二百万円の範囲で取消権を行使できる可能性があります。取消権は裁判に訴える必要があります。弁護士に相談されることをお勧めします。

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