高温ガス炉 実用化へ英国と連携 原子力機構 「業界の延命策」批判も

2020年10月17日 07時46分
 日本原子力研究開発機構は十六日、英国の国立原子力研究所と高温ガス炉の実用化に向けた連携を始めることで合意した。高温ガス炉は、核分裂エネルギーを発電だけでなく水素製造などにも併用する新型炉で、再稼働を控えた実験炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」(大洗町)の活用を想定。「原子力業界の延命策」とも批判される中、国策として大きく前進する。(宮尾幹成)
 原子力機構は二〇二一年一月のHTTR再稼働を目指す。英国との技術協力について、機構は「HTTRの建設や運転を通じて培った高温ガス炉技術の高度化と海外での実証を進め、国際標準化を図り、国際競争力の強化を目指す」と説明する。
 英国とは、すでに包括的な技術協力の取り決めを結んでおり、これに高温ガス炉の分野を追加した。今後、具体的な共同研究に向けた「実施取り決め」の締結を進める。
 高温ガス炉は、核燃料の冷却に水よりも高温の熱を伝えられるヘリウムを使う。高効率のガスタービン発電や高温熱を利用した水素の大量製造に加え、低温熱を海水淡水化や地域暖房にも活用できるとの構想だ。機構は「ヘリウムが漏えいしても核燃料は自然冷却し、原発のような炉心溶融事故は原理的に起きない」と安全性も強調する。
 政府のエネルギー基本計画は、水素製造などの産業利用が見込める新型炉として高温ガス炉を挙げ、国際協力の下で推進する方針を掲げる。機構は昨年九月、英国に先行して、ポーランド国立原子力研究センターと共同研究の実施取り決めを交わした。
 だが、勢いづく高温ガス炉の研究開発について、「『走る原発』エコカー 危ない水素社会」の著書がある上岡直見・環境経済研究所代表は「クリーンエネルギーのイメージがある水素を隠れみのにした原子力温存の動き」と断じる。
 上岡氏は、高温熱を扱う施設の耐久性や水素プラントを原子炉とつなげるリスクなど、高温ガス炉固有の技術的な課題を指摘。日立製作所が今年九月、英国の原発建設計画からの撤退を表明したことにも触れ、「原発の再稼働、新増設、海外輸出が行き詰まる中、原子力業界の期待を背負っているのが高温ガス炉だ」と警鐘を鳴らす。
 HTTRは熱出力三万キロワットの実験炉で、タービンや水素製造設備は持たない。一九九八年に初臨界し、一〇〇〇度近い高温熱を作る連続運転などを達成したが、一一年一月を最後に稼働していない。原子力規制委員会は今年六月、新規制基準に適合しているとする「審査書」を決定した。

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