HP作成や農業など、広がる障害者活躍の場 企業側も試行錯誤

2020年10月18日 06時00分
 コロナ禍でテレワークが進み、これまで障害者が担ってきたオフィスでの仕事が大幅に減ったのを受け、一部の企業で障害者に新しい仕事を任せようとする動きが出ている。教育に力を入れ、IT関連の仕事を任せたり、人手不足の農業に進出したりするなど、試行錯誤が始まっている。(山田晃史)

◆障害者にわかりやすい教材や作成ソフトも提供

事業所の一角でホームページ作成の勉強をするシンフォニア東武の大森光陽さん=東京都墨田区のシンフォニア東武押上事業所で

 東武鉄道グループの「シンフォニア東武」(埼玉県)で働く知的障害者、大森光陽さん(36)がパソコンの練習に懸命に取り組んでいた。画像や図をふんだんに使った教材を参考に目指すのは自社ホームページ(HP)の作成だ。「分かりやすいものを作りたい」と意気込む。
 同社は東武の「特例子会社」として障害者を専門に雇用、グループの配送物の仕分けや観光ポスター発送を請け負っていたが、新型コロナウイルス感染拡大で業務が激減した。
 現在はある程度仕事は戻ってきたが、「デジタル化の進展で今の仕事は減る。IT関連の業務もできる体制を整えたい」(椎山博司社長)として、研修に力を入れる。障害者就労支援を行うダンウェイ(川崎市)と契約、社員らはタブレット端末を使ったオンラインでの訓練を受けた。
 ダンウェイは情報把握能力を個人ごとに分析、HP作成の教材と専用ソフトを提供する。「障害者がHPを作れるよう色や数字で作業の順序を示すなど工夫している。訓練次第で中小企業のHPを作成できるようになる」。高橋陽子社長は言う。

◆「個々の潜在的な可能性を探ることから」

 担い手不足の農業で障害者が働く「農福連携」に取り組む企業も出てきた。繊維大手の帝人は特例子会社を設けて農場を作り、知的・精神障害者らが野菜を生産する。野菜はグループ社員らに販売する。「見学に訪れる障害者は増えている」(広報担当者)という。
 JAグループの旅行会社、農協観光(東京)は11月から、障害者を雇う企業と人手が必要な農家を仲介する事業を始める。企業に雇用される障害者が農園などで働き、農協観光は「サポーター」も派遣、障害者を支える仕組みだ。
 障害者の活躍できるフィールドが少しずつ広がる今、ダンウェイの高橋社長は「個人ごとに障害の程度、得意や不得意は大きく違う。まずはそこを分析し、どんな仕事が向いているか潜在的な可能性を探ることが重要」と話す。
 3月以降、解雇された障害者数は毎月前年を上回っている。8月に開かれた障害者雇用の審議会では、労使から「成功事例を集めて周知を」と国の支援を求める声が相次いだ。
 障害者雇用に詳しい慶応大の中島隆信教授は、知的障害者がゲームソフトの不具合を見つける仕事をしている例も挙げ、「まずは本業に関わる業務をいかに任せるか、それが大切」と指摘している。

 特例子会社 障害者雇用に特化した子会社で、雇っている障害者の数をグループ全体の雇用率に合算して算入できる。親会社とは別の給与体系にして人件費を抑えられる側面もあり、大企業を中心に導入が進む。昨年で517社あり、雇われている障害者は約3万7000人。うち約半数は知的障害者。

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