<記者だより>秋の夕焼け

2020年10月18日 07時11分
 ここ数年、親類を相次いで乳がんで亡くした。その一人が幼い子を残して旅立った秋の日は、夕焼けが殊更に美しかった。この時期の日暮れ時になると、彼女たちが重ねていきたかった季節の続きを思う。
 乳がん月間の今月、乳がんをテーマにした演劇を創作した横浜市の脚本・演出家を取材し、記事を書いた。彼女は自らと同じように乳がん治療を経験したサバイバーに舞台で輝いてほしいと願い、発声や歌、ダンスなど演劇の基礎を教えるワークショップを開いている。
 「当事者だから出せるリアリティーがあるなら」と、舞台経験がない中で出演を決めたサバイバーの一人は、会員制交流サイト(SNS)で記事を紹介しながら、演劇になぞらえてこんなコメントを添えた。「いつ、なんどきも、人生の主役は譲りません」
 前向きな言葉に胸を射抜かれた。告知、そして治療。再発を気にかけながら日常を取り戻し、なお、力強く人生の舵(かじ)をとる。舞台に立ってせりふを語る。こんな人たちが、不安や悲しみを抱える人たちに力を届けていく。 (杉戸祐子)

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