東京国際映画祭 31日開幕 コンペやめ「観客賞」/アジアの名匠対談を配信

2020年10月18日 07時29分

「東京国際映画祭」ラインアップ発表記者会見に登場した(左から)深田晃司監督、役所広司、是枝裕和監督=東京・六本木で

 第33回東京国際映画祭が31日から11月9日まで、東京・六本木ヒルズを中心に開かれる。新型コロナウイルスの影響で、今年は賞を競うコンペや、開幕日恒例のレッドカーペットはない。代わりにオンラインによる新たな試みを企画するなど、例年とは様相が違う映画祭となりそうだ。 (藤原哲也)

2016年の東京国際映画祭。俳優らがレッドカーペットを歩く光景は今年はない

 「こういう状況だからこそ、映画の楽しさを他の観客と共有してほしいと考えた」。9月下旬にあった映画祭のラインアップ発表会見で、最高責任者の安藤裕康チェアマンは開催を決めた理由をこう語った。
 今回は昨年まで行っていたコンペ3部門を統合。「TOKYOプレミア2020」と題して国内、アジア、欧州などの新作32本を上映する。同部門はコンペを行わない代わりに、全作品の中から観客が投票で「観客賞」を決める。
 フェスティバル・アンバサダーには俳優の役所広司が就任。「素晴らしい賞もいただき、役者として育ててもらった映画祭。形は変わったが、盛り上げたい」と意気込みを語った。

「アンダードッグ」から (C)2020 「アンダードッグ」製作委員会

 その他の部門は例年通りに近い。海外映画祭の受賞作などを集めた「ワールド・フォーカス」をはじめ、「特別招待作品」で今年のベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた米映画「ノマドランド」を上映する。「Japan Now」では、深田晃司監督を特集。2016年のカンヌ国際映画祭で、「ある視点」部門の審査員賞に輝いた「淵に立つ」などの長編や短編を披露する。

「HOKUSAI」から (C)2020 HOKUSAI MOVIE

 コロナ禍で窮地に立ったミニシアターを支援するための基金を共同で立ち上げるなど、映画界のために奔走する深田監督。同映画祭では10年前に「歓待」が「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞しており、「(海外を含む)多くの映画祭に呼んでもらうきっかけになった。非常にありがたい」と喜ぶ。
 オープニング作品は武正晴監督の「アンダードッグ」、クロージング作品は橋本一監督の「HOKUSAI」。主催者によると、全体の上映本数は前年の170本から3割減になる見込み。チケットは24日から部門別で一般発売するが、観客席数をどうするかは未定だ。
 同映画祭は海外の名だたる映画祭と比べて、知名度などが何かと議論になってきた。その流れで、改善を提案してきたという是枝裕和監督が企画したのがオンライントークイベント「アジア交流ラウンジ」だ。是枝監督らアジアの名匠や精鋭の映画人たちによる対談などを連日配信する。
 会見で是枝監督は、同映画祭でコンペを行うことを「積極的な意味があまり感じられない」と持論を述べた上で、「映画祭として違う形の豊かさを求めた方が、より個性が際立つのではないか。来年もアジアの監督たちが集う場所を持ちたい」と意欲を語った。
 映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「是枝監督の問題提起は非常に重要で、賛同できる部分はある」と発言を評価。その上で、今年の映画祭については「最近は海外の大物俳優らゲストが少なくなり、一般の人へのアピール度が下がっていたので、東京の独自性をどう打ち出すかが改めて問われている。今年の開催は、その試金石になるのでは」と話している。

◆国内各地の映画祭「オンライン開催」に活路も

 コロナ禍を受け、国内各地の映画祭は軒並み中止や延期となった。一方で、夏以降はオンライン開催に踏み切る主催者が相次いでいる。配信により自宅でも気軽に作品が見られることから、新たなファン獲得に向けて工夫を重ねる。
 北海道夕張市の人たちが画面の向こうから笑顔で手を振っていた。今年で三十回目を迎え、九月に開かれた伝統の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のオープニングセレモニー=写真。東京都内の会場から中継された夕張の様子に悲壮感はなかった。
 もともと冬の開催だったが、三十周年を機に夏に変更。ところが、コロナ禍で延期となり、最終的にオンラインでの九月開催となった。動画配信サービス「Hulu」と連携、全五十四作品を無料で上映した。
 事務局によると、昨年の来場者約一万二千人を上回る人が視聴。アンケートでも評価が高かったという。担当の杉谷輔智さんは「映画祭を一度中止するとやり直すのは難しいし、夕張に来られない人にも知ってもらえるチャンスなので開催を決断した。思った以上の反応だったので、来年はリアルとオンラインの“ハイブリッド型”の開催を検討したい」と前向きだ。
 埼玉県川口市で九〜十月に開かれた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は、コンペ部門の全二十四作品を有料配信。事務局によると、八千回以上視聴され、昨年の有料入場者数(九千二十四人)と比べても遜色なかった。担当者は「アンケートでも肯定的な反応が多く、来年の開催形式はまた考えたい」と配信の継続に含みを持たせる。
 これらの動きについて大高さんは「映画と観客の結び付きを持続させる意味で、オンライン開催は重要」と分析する一方で、「知ってもらうチャンスも大事だが、そもそも何のために映画祭をやるのか考える必要がある。形式や映画祭のあり方など、新たな選択肢を考えていく機会になるのでは」と指摘している。

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