コロナで地方の貯金残高「危険水域」 積み増しの見通しもなく

2020年10月19日 06時00分
 地方自治体の「貯金」に当たる財政調整基金(財調)の残高が、新型コロナウイルス感染症への対応で大幅に目減りしたことで、自治体では財政運営に対する危機意識が高まっている。景気低迷による税収の落ち込みも確実な情勢。非常時のための「貯金」を再び積み直せるかは見通せない。(山口哲人、中根政人)

◆「来年度以降も影響もろに」

 「コロナで税収が大きく減ると、財調で予算の穴埋めをせざるを得ない。来年度以降もコロナの影響をもろに受ける」。神奈川県の財政担当者は本紙の取材に、不安を率直に語った。
 愛知県は「県税諸収入が想定より400億円下がり、相当なインパクトだ」と強調。感染者数が少ない岩手県ですら「今後の予算編成に支障を来しかねない。危険水域だ」との認識だ。
 都道府県の財政状況を家計に例えると、新型コロナによる不景気で給料(税収など)が減って生活費を賄いきれず、何年もかけて積み立ててきた貯金(財調)をどんどん切り崩して何とかしのいでいる状態だ。例年なら、年度末に向けて税収の上振れや前年度決算で余った分などを財調に繰り入れて残高を増やすが、現状ではそれも難しい。

◆特別会計から借り入れ、県債発行も

 コロナ対策に財調から1円も取り崩していない県もある。だが、別の基金から対策費を工面しているためで、財政状況が厳しいのは同じだ。埼玉県は、5月にコロナ対策に特化した基金を新設したが、原資は県の特別会計からの借り入れ。100億円あった基金は約30億円にまで減った。
 県庁舎の建て替えなど県有施設の整備に備えた特定目的基金(260億円)がある岐阜県は、基金をコロナ対策にも活用できるよう県条例を改正した。ただ使用した41億円超は県債の発行で穴埋めする。
 両県とも、コロナ対策の費用をひねり出したツケは「借金」として今後にのしかかってくる。
 コロナ対策の財源として頼りたくても頼れないのが熊本県。コロナ対策での取り崩しは約5億円にとどまる。7月の豪雨災害などの対応で財調が底をついてしまったからだ。県の担当者は「国の強力な支援がほしい」と嘆く。

◆臨時交付金もとっくに底をつき

 国がコロナ対策で地方自治体に配分している地方創生臨時交付金は、全国知事会が8月の時点で「全ての都道府県で活用見込み額が交付限度額を超えている」と指摘。不足額が計5000億円に上るとの調査結果を公表し、窮状を訴えた。9月下旬にも再度、臨時交付金のさらなる増額を含む財政支援を国に求めている。
 南山大の森徹教授(地方財政論)は国の対応について「長期的には財政再建の方向を追求しなければならない」とした上で、コロナ対策での地方支援は「都道府県などにある程度の自由度を持たせ、状況に応じて国が必要な費用をバックアップする態勢が必要だ」と指摘する。

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