新型コロナ 増える労災申請 療養費用、休業補償を給付 感染経路不明も認定

2020年10月19日 07時18分

コロナに職場で感染したと訴える人が申請の際に出す申立書

 勤務中に新型コロナウイルスに感染したとして、労災保険を申請する人が増えている。厚生労働省は、感染経路が不明でも柔軟に労災と認定する方針を示す。無症状でも感染を広めるリスクがあり、どこで感染したかを証明するのが難しいことなどが理由だ。仕事で感染した場合、どのように申請すればいいのか。 (熊崎未奈)
 七月に発熱で医療機関を受診した愛知県内に住む七十代の介護職員。感染が判明し、約三週間入院した。退院後もせきや関節の痛みが続く。
 発症前、仕事以外は車でスーパーに行く程度。マスク着用や手指消毒など予防は徹底していた。同居の家族二人は陰性。一方、職場の介護施設では職員や宅配業者などと接触があった。
 「仕事で感染した」と考えた職員は、施設側に労災保険の適用を申し出た。しかし、施設側は他に陽性者がいないとして拒否。職員は八月中旬、名古屋労災職業病研究会の支援を受け、必要な書類を添付した上で労働基準監督署(労基署)に労災の請求書を提出、九月末に認定された。
 労災が認められると、治療にかかる療養費用は自己負担ゼロ。休業中は休業四日目から賃金の八割が補償される。職員は療養費用の給付と、とりあえず約六週間分の休業補償が認められた。今も通院中で復帰のめどは立たず、引き続き休業補償を申請中だ。
 厚労省は四月、コロナ感染に関する労災を積極的に認定する方針を示した。職員のような医療・介護従事者は、業務外で感染したことが明らかな例を除き認めるとした。医療従事者以外も、労基署の調査で仕事が原因の可能性が高ければ感染経路が不明でも認めるとしている。
 厚労省によると、十月十四日時点で申請件数は千五百五十八件。調査を終えた七百七十七件全てが認定された。脳・心臓疾患の認定率が約三割にとどまることを考えると異例だ。同省が公表した事例には感染経路は不明だが日々数十人を接客した小売店販売員や、多数の客を乗せていたタクシー運転手らが含まれた。
 労災に詳しい弁護士の川人博さん(71)は「職場で感染した可能性があれば、積極的に申請を」と促す。川人さんによると、申請からおおむね二カ月以内に結果が出ている。ただ、不特定多数と接する通勤中の満員電車で感染したと訴えた場合に認められるかは不透明だ。後遺症が出た場合に出る一時金や年金が支給されるかも分からない。因果関係が医学的に解明されていない点が多いためという。

◆申立書に行動歴を記入

 申請の請求書は厚労省のホームページや労基署で入手できる。原則として、療養費用給付の請求書は治療を受けた労災指定医療機関へ、休業補償給付は労基署に提出する。いずれも事業主の証明が必要で、職場の人事労務担当に相談するといい。拒否された場合は、その旨を書面にして、労基署への請求書に添付する。
 コロナで労災を申請すると、労基署から認定の判断材料になる申立書の提出を求められる。仕事でも私生活でも、人が集まる場所や密閉空間など感染リスクが高いところでの動きを中心に発症前十四日間の行動歴などを書く。
 名古屋労災職業病研究会の成田博厚さん(48)は、普段からその日の行動や会った人などを記録するよう勧める。「事業主の協力がなくても、仕事で感染した可能性を示せれば認定につなげられる」と呼び掛ける。

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