コロナワクチン狙ったサイバー攻撃、国内で初確認 開発競争で情報戦が世界で活発化

2020年10月19日 11時09分
内閣サイバーセキュリティーセンターのホームページ(共同)

内閣サイバーセキュリティーセンターのホームページ(共同)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン開発を巡り、機密情報を持つ日本国内の組織に対し研究内容を盗み取ろうとするサイバー攻撃が仕掛けられていたことが、情報セキュリティー会社への取材で分かった。国内で攻撃が確認されたのは初めてとみられ、中国のハッカー集団の関与が疑われている。情報流出の報告はないという。
 ワクチン開発競争が激しくなる中、研究機関などを狙った情報戦は欧米を中心に活発化している。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は製薬会社や研究機関が狙われやすいとして注意を呼び掛けている。
 米情報セキュリティー会社「クラウドストライク」によると、4月以降、日本国内の複数の組織に対し断続的な攻撃があり、新型コロナに関係する内容の電子ファイルにコンピューターウイルスを忍ばせてメールを送り付ける手法を確認した。狙われた具体的な組織名は明らかにしなかったが、使われたツールの特徴などから犯人は中国のハッカー集団の可能性があると分析している。
 英国、米国、カナダの3カ国は7月、コロナワクチンを開発する自国の研究機関に対し、ロシアの情報機関と関係のある組織からサイバー攻撃を受けたとする報告書を公表した。ロシア当局は関与を否定している。
 世界保健機関(WHO)などによると、9月末までに約190のワクチン開発計画が進行中で、最終段階の実験に進んだものもある。日本では国立感染症研究所や東京大、大阪大などが開発を進め、一部は臨床試験(治験)を始めている。
 クラウド社でアジア太平洋地域のディレクターを務めるスコット・ジャーカフ氏は「他国に先駆けてワクチン開発を達成するため、国家ぐるみのサイバー攻撃が活発になっている」と指摘した。

◆ハッカー集団、欧米で暗躍…政府関係者「対岸の火事ではない」

 新型コロナワクチンの研究が先行する欧米では、既に国家の関与が疑われるハッカー集団の暗躍が確認されている。政府関係者は「日本の研究には価値があり標的になる。対岸の火事ではない」と警戒する。
 医療分野の研究を支援する日本医療研究開発機構はこれまでに、大学や民間企業が行う20件の研究開発事業を採択した。政府の基金を活用し、1つの事業に最大100億円を助成する。武田薬品工業や第一三共などが名乗りを上げている。
 海外では年内の供給開始を目指す企業もあるが、日本では「有効性や安全性など全てのことが予測困難」(ワクチン開発研究者)として供給開始のめどは立っていない。ただ政府関係者は「認可のスピードが遅いだけで、研究内容は欧米にひけを取らない」と話す。
 研究情報を盗み取ろうとする活動も活発化している。米司法省は7月、中国政府から請け負って企業や政府機関へのハッキングを繰り返したとして、中国人2人を起訴したと発表した。コロナワクチンの研究成果も標的にしていた。
 スペインの情報機関は9月、同国の研究機関が中国のハッカー集団からサイバー攻撃を受けたと現地メディアに説明した。中国当局はいずれも関連を否定している。
(共同)

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