コロナ発生の高齢者施設に職員を派遣 東京都、広域連携へ 人手不足補う

2020年10月20日 06時00分
 東京都は新型コロナウイルス感染により人手不足に陥る高齢者施設へ、別の施設から応援の職員を派遣する体制づくりを始める。感染者が出ると、周りの職員が濃厚接触者として自宅待機となり、介護業務などに支障が出るケースに対応する狙い。都は月内にも事業者団体と協定を結ぶ。(小倉貞俊)

◆都内18施設でクラスター

 都内には特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)など1790の高齢者施設がある。16日までに92施設で入所者228人、職員135人が感染。5人以上のクラスター(感染者集団)は18施設、10人以上は9施設で、最多の施設は51人に上った。
 職員は感染していなくても、保健所の調査で濃厚接触者に指定されると2週間の自宅待機が必要。複数の職員が勤務できないと業務への支障や、過度な勤務にもつながる。都には、クラスターが起きた施設から「残った職員に負担が集中した」「消毒や隔離の作業が大変」などの声が寄せられている。
 このため都は月内にも、特養や老健でつくる事業者団体2団体と「新型コロナ感染症発生時の職員派遣に関する協定」(仮称)を結ぶ。両団体にそれぞれコーディネーターを置き、職員の派遣に協力する施設を登録。感染で人手不足となる施設に派遣の調整などをする。都は国の補助金で、コーディネーターや協力施設に人件費などを支援する。

◆すでに導入した自治体も

 施設間の職員応援の仕組みは、神奈川や千葉県などが導入。都内では江戸川区や町田市、あきる野市などが始めた。まだ都内で派遣例はないが、江戸川区の担当者は「介護現場は慢性的な人手不足。いざというときに区内の協力施設が人を出せないおそれもあり、登録施設を増やしていく必要がある」と課題を指摘する。
 都の担当者は「法人内や自治体内での対応が困難な場合に、都の仕組みを利用してもらえれば。重層的な備えで、介護現場を支えたい」としている。

◆現場からは期待の声

 新型コロナウイルスの感染で人手不足となる高齢者施設へ、別施設の職員を派遣する体制づくりを東京都が進める。緊急時にスタッフ確保に追われる現場にとって、大きな助けとなることが期待される。
 「感染者が出たと知ったときは仰天した。十分な人手を確保できるか、心配でした」。今夏にクラスターが発生し、職員の大半が自宅待機となった23区内のある高齢者施設で、施設長が当時の苦労を思い起こす。

新型コロナの発生で職員の大半が自宅待機になり、空白が目立つ当時のシフト表を手にする施設長=東京都内で

◆クラスターで運営危機なりかねない

 7月下旬、高齢の入所者が体調を崩して入院した。念のために受けたPCR検査で、2日後に陽性と判明。職員や入所者も検査を受け、約15人の感染が分かった。感染した入所者のフロアを担当する職員約30人が濃厚接触者とされ、2週間の自宅待機となった。
 施設長は残った職員でシフトを組み直し、他県にある同じ運営法人の施設に職員の応援を要請。ただ、症状の重い高齢者が多い中、担当者が不在になったことで普段の健康状態や服用薬などがすぐ把握できず、介護業務が多忙を極めた。
 施設長は「濃厚接触者を減らすよう、職員ごとに活動フロアのゾーニング(区画分け)といった備えを徹底しておくべきだった」と振り返る。「幸いにも法人内で職員の融通ができたが、施設によっては運営の危機にもつながりかねない」と話し、感染発生時のスタッフ確保の難しさを語った。

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