車いすでもスイスイ バリアフリー地図アプリ、段差や坂道などみんなで投稿

2020年10月20日 13時47分

スマートフォン用アプリ「WheeLog!(ウィーログ)」の街歩きイベントで、バスに乗る車いすの参加者=9月6日、徳島県鳴門市で(ウィーログ提供)


 車いすの人たちの走行データや投稿を基に、利用しやすい道や施設が一目で分かるようにしたバリアフリー地図のアプリが、想定を超えた裾野の広がりを見せている。一般の人が参加する街中での体験会や学校の授業に加え、東京パラリンピックに向けた観光案内にもノウハウを活用。当事者の利便性向上にとどまらず、小さな「気付き」が快適な社会をつくる契機になっている。

◆通りやすい道が一目で

 「思っていたより坂道だった。平たんな気がしたんだけど」。9月初めの日曜日、スマートフォン用アプリ「WheeLog!(ウィーログ)」の運営団体が開いたイベント。仙台市中心部の定禅寺通りで、初めて車いすに乗った男子大学生が目を丸くした。別の参加者は「すれ違う人の圧迫感がすごい」と漏らした。この日は車いす利用者と徒歩での参加者がチームをつくり、神奈川や徳島など8都県で19組約90人が一斉にバリアフリー状況を調査。オンライン中継もした。
 アプリは衛星利用測位システム(GPS)を使って車いすの走行経路を地図上に線で表示。多くの人が通れば線の色が濃くなり、通りやすい道が分かる。短文や写真も投稿可能。「駅に新しいエレベーターができた」などの情報や「新しい車いす(の納車)うれしい」「かわいいね」といった交流も。2017年にサービスを開始し、現在は海外を含む4万件近い情報が登録されている。

◆「自分の気付きが誰かの役に立つ」

 群馬県立伊勢崎興陽高校は体験学習に活用。18年から学校周辺や修学旅行先の沖縄県内で車いすの街歩きを行っている。「こんな場所に段差あったんだ」「思ってたより狭い」。普段なら気に留めない程度の“難所”に生徒たちは足を止め、次々に投稿する。中山見知子教諭は「車いすに乗って終わりにするのではなく、自分たちの気付きが誰かの役に立つという経験をさせたかった」と狙いを明かす。
 上越教育大の藤井和子教授(特別支援教育)もアプリを使った授業に本年度から取り組む。「情報を投稿しようと考えることで当事者の視点に立てる。自分たちも社会づくりの担い手だとの意識を育てたい」と話す。
 観光庁は東京パラに合わせ、ウィーログに訪日外国人向けのガイドブック製作を委託。きめ細かい調査手法を生かし、バリアフリーが整い、外国人に対応できる飲食施設を紹介してもらう。

「WheeLog!」の織田友理子代表=9月6日、東京都渋谷区で

◆社会良くなるきっかけに

 こうした広がりを「予想していなかった」とウィーログの織田友理子代表(40)。手足の先から筋力が低下する難病を患い、自身も車いすを使う。当初、人の手を煩わせるのではないかと外出をためらうことも多く「情報があればあきらめずに出歩ける」との思いでアプリを開発した。思わぬ反響に「障害の有無にかかわらず多くの人に活動に参加してもらい、自分のこととして考えるきっかけにしてほしい。その積み重ねで街が良くなり、社会が良くなる」と期待を込めた。

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