残業80時間も…減らない保健所の負担 感染経路の聞き取りに多くの時間

2020年10月21日 06時00分
 新型コロナウイルスの新規感染者が多い地域では今も、保健所の職員は多忙を極めている。負担となっているのが、感染者への聞き取り。感染経路や濃厚接触者を調べる必要があるが、詳細を語りたがらない人もいれば、外国人への聞き取りに時間を要することも。感染者が連日確認されている東京都の江東区保健所の現状を聞いた。(井上靖史)

◆行動歴拒む人、一人に半日かかることも

 「多い人は現在も月に50~80時間の残業をしている」。江東区保健所の保健師山本民子さん(53)はそう明かした。

「保健所の負担が重い状況は続いている」と訴える山本さん

 都によると、江東区では8日に13人の陽性が判明するなど、10月に入って新規感染者がいなかった日はない。1~18日の感染者は計89人。保健所は1人ずつ、感染前に出かけた場所や誰と会ったかなどを聞き取りしている。
 山本さんは「1人の聞き取りに半日かかることもある。昼休みは5分。記録は残業して仕上げなければならない日もある」と話す。
 行動歴を言いたがらない人も少なくない。ある母親も説明を拒んだ1人。時間をおいて、感染者を増やさない目的などを説明して説得すると、重い口を開き、「子どもの誕生会がレストランでできるようになり、音頭を取って開催したら陽性になってしまった。子どもに感染していたら、どうしよう」と打ち明けた。
 クラスター(感染者集団)が発生した店の外国人店員の聞き取りも時間がかかった。「言葉の問題もあって意思疎通が難しく、本人の行動歴を尋ねるまでに30分かかった」。1人ずつ別々に食事を取る家族なのに5人全員が感染したケースは、なかなか感染経路が分からなかった。1人から「母がとてもよく話す人だから」と聞き、母親を介して感染が広がった経路が推察できた。

◆COCOA通知でPCR検査希望者も増加

 ほかに、患者の健康観察などの仕事もある。最近はスマートフォン用の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」を通じて、感染者と濃厚接触した可能性があると通知された人がPCR検査を希望する人も増え、多くの検査もこなさなければならない。
 江東区保健所の尾本光祥保健予防課長は「職員を大幅に増やし、患者情報の電算化で業務の効率化も図ったが、感染者数は夏場も多く、検査対象も広がっていて仕事はなかなか減らない」と苦しい事情を説明した。

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