50代からの挑戦

2020年10月21日 06時48分
 五十にして天命を知る、という。「論語」の教えだ。五十四歳の自分を振り返れば、天から授かった使命に邁進(まいしん)どころか、体力気力の衰えばかり気にかかって情けない。
 だから、将棋界の話題に勇気づけられた。羽生善治九段(50)が八大タイトルの一つ、竜王戦の挑戦者として、豊島将之竜王(30)との七番勝負を戦っている。
 もし奪取すれば、タイトル通算百期の快挙だが、同世代としては「五十歳」という年齢がすごいと思う。研究熱心な若手がひしめく厳しい世界。予選を勝ち抜くこと自体が至難で、五十代以上のタイトル挑戦は三十年ぶりだそうだ。
 永世七冠など輝かしい実績を持つ羽生さんも、二年前に無冠に転落していた。
 「十年先を考えると、一番保守的な作戦は一番悪い選択」「適切なリスクを取る」。著書で説くように、未知の局面で失敗を恐れない勇気が、再びひのき舞台に立つ原動力となったに違いない。
 羽生さんほど派手ではなくても、「五十代で物事に挑戦した」という身近な友人知人の経験談は興味深い。大学での学び直しや資格の取得、外国への長期の一人旅…。
 この人生百年時代に、五十代は折り返し点にすぎない。新たな物事や未知の人々に出会い、気付きを得ることは、生き生きと生きるための必須条件だと思わされる。 (臼井康兆)

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