ライトとタウトと日本文化 都内の建築家、本質迫る著書刊行

2020年10月21日 08時09分

著書を手に語る西川新八郎さん=東京都町田市の自宅で

 日本文化に魅せられたドイツの建築家、ブルーノ・タウト(一八八〇〜一九三八年)と米国の建築家、フランク・ロイド・ライト(一八六七〜一九五九年)。東京都町田市の建築家・西川新八郎さん(82)は、二人が残した建造物や著作を通して日本文化の本質に迫る著書「ライト&タウト たをやかに−建築家が視る日本文化の輪郭−」(中央公論事業出版)を刊行した。(藤英樹)
 西川さんは早稲田大建築学科を卒業後、大成建設で設計に携わり、定年後は建築事務所を主宰。十年ほど前から、俳句にも傾倒している。
 本書を書くきっかけは、十年前、静岡県熱海市に唯一残るタウト設計の日向別邸(国の重要文化財)の内装を見たことだった。天井に連ねて吊(つ)った裸電球に失望したという。本書で「烏賊(いか)釣り漁の電球」と表現している。
 西川さんが抱いていたタウトの印象は「京都の桂離宮を評価して、日本の美を再発見した人」。ただし、襖(ふすま)の市松模様と庭の蘇鉄(そてつ)は非日本的で違和感があると嫌ったとされる。「彼は本当に日本の美を理解していたのだろうか」と疑問が膨らんだという。
 一方、ライトについては、若い頃から、米国のライト邸(タリアセン)や日本での代表作、東京の帝国ホテル玄関のホワイエ(吹き抜け)に見られる「流れるような空間」に感動したという。
 「浮世絵などを通じて日本文化に魅せられたという共通点を持つタウトとライトだが、本質的なところで理解に相違があったのではないか」。そう考えた西川さんが本書の後半で取り上げるのが、何人かの連衆(れんじゅ)が交互に詠んで一巻の作品に仕上げる連句や、一句の中に切れと間を作る俳句。「切れと間によって、異質のものを取り合わせる」ことが日本文化の本質なのではないかと考え、それは縁側や襖を設けた開放的な日本家屋にも共通すると喝破する。
 本書の結論で西川さんは「タウトが共感したのは自然と関わる部分の純日本的な美だった。本当の美は異質なものを調和させたライト作品の流れるような空間にこそあるのではないか」と説き、「日本文化の本質を一言でいえば『たをやかさ』だ」と語る。
 本書には隈研吾さんら建築家から反響があったという。「異論もあるでしょう。多くの方に読んでいただき、ご意見を聞きたい」。問い合わせは中央公論事業出版=電03(5244)5723=へ。

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