野球少女を増やしたい アマに戻った彼女たちの再スタート

2020年10月21日 17時30分

仕事を終えた後、練習に参加する青木悠華選手=愛知県一宮市営球場で


 プロからアマに戻った女子野球選手たちが、新たな挑戦をスタートさせている。プロチームが撤退した愛知県一宮市で、2月に発足したクラブチーム「東海NEXUS(ネクサス)」。地元企業で働きながら練習を続けるメンバーらは「野球を伝え、広げていくチームにしたい」。球場に歓声を取り戻そうと、意気込んでいる。(岩井里恵)
 「オーライ!」。作業着姿の小柄な女性が声を張り上げる。9月末、同県稲沢市のJR貨物愛知機関区。油にまみれながら、貨車のメンテナンス作業に励む。
 昨季まで日本女子プロ野球リーグの育成チームでプレーした青木悠華ゆうか選手(20)。今は毎週、土日に加え、水曜日には正午まで仕事をした後、ネクサスの練習に駆けつける。野球に専念できたプロ時代よりも「むしろ運動量は増えた」と前向きだ。収入も減ったが、「仕事も野球も両方楽しい」と話す。
 今年2月、一宮市に拠点を置いていたプロチーム「愛知ディオーネ」が2年で撤退。観客数の伸び悩みなどによる経営難から、リーグが全チームの拠点を京都に集約したためだ。だが、「女子野球の将来を考えると、東海地方での普及が不可欠。愛知からチームを無くしてはいけない」とディオーネの元監督、いかり美穂子さん(33)や選手が中心となり、ネクサスを創設。地域に根ざしたチームづくりに取り組むことになった。

地元で仕事を得て、野球との両立を目指す青木選手=愛知県稲沢市のJR貨物愛知機関区で

 現在、メンバーは監督の碇さんと20~26歳の元プロ選手6人。選手のうち4人はディオーネに在籍経験がある。活動に賛同する企業で働きながら週3日、ディオーネの本拠地だった一宮市営球場を拠点として練習している。
 9月末には公式ユニホームを披露したが、まだ試合ができるまでの人数はそろっていない。そこで、ファンが打撃練習の球拾いなどに協力している。その1人、同市の会社員青木寛和さん(44)は「一宮に残ってくれてうれしい。いつかは新聞のスポーツ面に載るような存在に」と期待する。
 現在は中部地方の女子硬式野球チームでつくる「センターリーグ」に加盟し、さらに選手を募って来季の参戦を目指す。元ディオーネの榊原梨奈選手(26)は「野球がやっぱり好きなのでプロ撤退でもやめようとは思わなかった。碇監督の話を聞き、愛知出身の自分が力になりたいと思った」と話す。
 未来の野球少女たちに道を開きたい、とのメンバーらの思いも一からの再スタートを支える。元日本代表で、長く女子野球を支えてきた碇さんは「自分たちの力が現状を変える一助になれば」。中学時代、身近に野球ができる環境がなかったという青木選手も「東海地方で野球をやる女の子を増やしたい」と語る。

 女子硬式野球の現状 日本女子プロ野球リーグは2010年、関西の2チームで開幕。その後、京都、兵庫、埼玉を拠点とした3チームと育成チームの編成になった。18年に兵庫ディオーネが拠点を愛知県一宮市に変更。今年2月、全チームの拠点を京都に集約することが発表された。
 アマチュアでは関東、関西にそれぞれプロ野球の巨人、阪神が支援するリーグがある。

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