「KING&QUEEN 英国王室の物語」 王冠の裏の愛憎劇

2020年10月22日 07時05分

ナビゲーター・中野京子さん(c)文藝春秋/三宅史郎

 陰謀、怨恨、復讐(ふくしゅう)…。英国王室の歴史には華やかなイメージの一方で、血なまぐささも漂う。東京・上野の森美術館で開催中の「KING&QUEEN展」は、肖像画を通して、王冠の下に彩られてきた人間ドラマを現代に伝える荘厳な一大絵巻となっている。
 同展の公式ナビゲーターを務めるのは「イギリス王家 12の物語」の著作もあるドイツ文学者、作家の中野京子さん。美しい絵画の裏に潜む恐怖や悲劇性を説いた「怖い絵」シリーズの著者でもある中野さんが同展の肖像画にどんな物語を発見したのか−。

◆悪女か犠牲者か… アン・ブーリン(1500?〜36)

作者不詳 16世紀後半(原作:1533~36年ごろ)油彩/板 (C)National Portrait Gallery, London

 アンは美女ではないが独特の魅力を放っていたという(本肖像がアンと認定された証拠の一つは、ブーリンのBを象(かたど)ったネックレス)。
 果たしてアンはヘンリー八世を誘惑した悪女だったのか、それとも彼の犠牲者にすぎないのか…。いまだ評価の分かれるところだが、王がアンに夢中になり、彼女に世継ぎの息子を産んでほしくて最初の妃を幽閉し、国教をカトリックから離婚可能なプロテスタントへ変えたのは事実だ。
 そこまでしての再婚なのにアンは女児しか産めず、激怒した王は情け容赦なく彼女を斬首。このアンの一人娘エリザベス一世こそが名君としてイギリスを強国にするのだから、なんという歴史の皮肉か。

◆冷酷無比な巨漢王 ヘンリー8世(1491〜1547)

作者不詳(ハンス・ホルバイン[子]の原作に基づく)17世紀か(原作:1536年)油彩/銅板 (C)National Portrait Gallery, London

 絶対王政の陽の面を代表するのがフランスのルイ十四世なら、ヘンリー八世は陰の体現者と言える。玉座について真っ先に断行したのは、父王に仕えた重臣らの処刑であり、その後も己の意に沿わねば師でさえ容赦しなかった。
 もちろん妃もだ。六人の妃のうち二人を−でっち上げの罪をかぶせて−斬首、二人を無理やり離縁。その冷酷無比と暴力性、一九〇センチ、一〇〇キロの巨躯(きょく)が放つ威圧感をドイツ人画家ホルバインがあますところなく表現してみせた。
 もしホルバインが宮廷画家としてイギリスに赴いていなければ、後世の我々がこれほどテューダー朝に魅了されることもなかったのではないか。肖像画の力を思い知らされる。

◆当日券もあります。予約なしで入れます。

 本展は来年1月11日まで、上野の森美術館で開催。会期中無休。入館料は、平日は一般1800円、高校・大学生1600円、小・中学生1000円、土日祝日は一般2000円、高校・大学生1800円、小・中学生1200円。詳細は公式HPを参照。問い合わせはハローダイヤル=電03(5777)8600=へ。
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

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