【動画あり】本場・中国四川省でパンダ繁殖に向け奮闘 上野動物園元飼育員の阿部展子さんが描く夢

2020年10月22日 11時45分

子どものパンダの世話をする阿部展子さん=いずれも16日、四川省の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地で

 東京・上野動物園でパンダのシンシンとリーリーの世話をした経験がある飼育員の阿部展子のぶこさん(36)=新潟県出身=が、パンダ生息地の中国四川省にある繁殖研究施設「成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地」で3年前からパンダの繁殖に向け奮闘している。阿部さんをパンダの故郷に駆り立てたものは何なのか―。 (四川省成都市で、白山泉、写真も)
 3頭の幼いパンダが阿部さんにじゃれつく。今年3月に生まれた3頭の雄は人間なら2歳ほど。1頭ずつ体重を量る阿部さんと、邪魔するパンダたちの様子に観光客は「非常可愛(とってもかわいい)」と一斉にスマホのカメラを向ける。
 阿部さんの目に映るパンダは「かわいい」だけではない。担当するのはパンダの産室。2歳までの子どもと、出産を控えるパンダなど20頭以上の世話に当たり「泊まり込みや徹夜は日常茶飯事で『飼育員は睡魔との闘い』と身をもって知った」と苦笑する。

木に登って遊ぶパンダ

 3歳のころ祖母からもらったパンダの縫いぐるみが宝物。テレビ番組や図書館でパンダ情報を追い続け、進路に迷った高校3年の時に「パンダの道」を志した。日本の大学で中国語を学んだ後、パンダ専門家を多数輩出する四川農業大学に「初の外国人本科生」として入学。その間、パンダ繁殖基地で実習を積み、2010年にパンダのペアが日本に行くと聞き、帰国して上野動物園に就職した。

休憩中に取材に応じる阿部展子さん

 生涯忘れられない出来事は、12年7月、シンシンが自然交配で出産した赤ちゃんが1週間後に死んだこと。今でも思い出すと涙をこらえきれなくなる。「かわいそうな子をもうつくらない」と阿部さん。「もう1度、パンダを専門的に勉強したい」と、かつて留学した成都を再訪した。
 パンダ繁殖基地に就職して3年余りがたった今、阿部さんには「パンダの野生復帰」という目標がある。中国では訓練を経た数頭が既に山に放たれている。その一方、パンダの保護活動でヒョウやオオカミなどの動物が減ったとの研究もあり、生態系全体を考えた取り組みが求められる。
 阿部さんが強く意識するのは「人の手をなるべくかけず、パンダ同士の時間を増やすこと」。母親パンダはどう子育てするのか、発情期に雄はどう行動するのか…。パンダ自身も経験豊富な親や先輩パンダと過ごしながら学ぶという。将来、繁殖基地で生まれたパンダやその子孫が自然に帰れる日に備え、阿部さんは「パンダらしいパンダ」に育て上げることを目指す。

 ジャイアントパンダ 四川省のほか、甘粛省や陝西省の標高1300~3500メートルの山岳地帯に生息。肉食動物の特徴を持つが、主食はタケやササ。野生のパンダは約1900頭、世界で飼育されているのは約600頭。年に1度しか発情せず、繁殖は難しい。野生パンダの75%が生息する四川省では2006年、省内7カ所の自然保護区などが「保護区群」として世界自然遺産に登録された。成都の繁殖研究基地や臥竜(がりゅう)、雅安にパンダ保護や繁殖を目的にした研究施設がある。

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