密にならぬよう 猿之助5役 来月「吉例顔見世大歌舞伎」

2020年10月23日 07時23分

「稽古の時間が限られ、共演者とはLINEで連絡をとっています」と話す市川猿之助=東京・銀座で

 東京・歌舞伎座の「吉例顔見世大歌舞伎」(十一月一〜二十六日)で、市川猿之助(44)が早替(が)わりに挑む。コロナ禍が長引き、舞台上でも密の回避に努めなければならず、「まだ(出演者の)人数を出せないので一人五役をやります」と笑わせながらも「生で見る良さを伝えていきたい」と抱負を語った。 (山岸利行)
 五カ月ぶりに再開された八月の歌舞伎座公演に出演した猿之助。「緊張感があった。(収容率が50%の)一つおきの客席も、そういうものと思って出ていた」と振り返るが、「おしゃべりできない分、拍手に気持ちが乗っていたのが分かった」と観客の熱量に感動した様子。
 感染防止対策のため、十一月も引き続き四部制で各部一演目の公演。猿之助は第一部「蜘蛛(くも)の絲宿直噺(いとおよづめばなし)」に出演、五役を演じる。
 「土蜘蛛(つちぐも)伝説」をもとにした舞踊で、能「土蜘蛛」がベースになっている。
 平安中期の武将、源頼光の館では、病中にある頼光を守るため家臣らが宿直中。そこへ、頼光を狙う女童(めわらべ)、小姓、太鼓持(たいこもち)らが次々と現れて寝所へ忍び込もうとする。やがて、傾城(けいせい)薄雲が現れ、久しぶりの逢瀬(おうせ)を楽しむ二人だったが…。
 土蜘蛛がさまざまに姿を変えて頼光に近づくというストーリーの、華やかな舞踊劇。隈(くま)取りをした蜘蛛の精が大立ち回りする場面も見どころの一つだが、密になるリスクに配慮して今回、この演出はやらない。
 役の演じ方について猿之助は「演じる場合、自分を役に近づけるスタイルと、役を自分に引き寄せるスタイルがある」とし、「(屋号の)澤瀉(おもだか)屋は役を自分に引き寄せるスタイル」だという。そこで、それぞれの役を引きつけ「役になりきった上で自分をお見せできたら」と語った。また、「早替わりはチームワーク」ともいい、舞台をつくるワンチームであることの重要性も指摘した。
 歌舞伎座での公演再開前にオンラインで配信された「図夢歌舞伎」で、松本幸四郎(47)らと共演した。「高麗屋(幸四郎)の『図夢歌舞伎をやる』という勇気がすばらしい。僕にはできない」と幸四郎をたたえながら、「これからは歌舞伎役者にも映像の知識が求められると思う」と、歌舞伎界の今後を見据える。
 また、大手三味線メーカー、東京和楽器の廃業問題にも触れ、「消えていくものがあれば生まれてくるものがある。『昔は歌舞伎は生でやっていたんだよ』という時代が来るかも」と将来を予想したが、「舞台を生で見る良さも伝えていきたい」とも。
 高視聴率を記録したドラマ「半沢直樹」では歌舞伎俳優ならではの迫真の顔芸で視聴者をくぎ付けにしたが、「『半沢』に歌舞伎(の要素)が持ち込まれたのでは」と語った。
 「十代、二十代のつもりが、気付けば肉体的には働き盛り。後輩の育成や、コロナの時代に何ができるかを考えないといけない。でも、コロナがあってもわれわれがやることは変わらない」と気持ちを引き締めた。

◆吉例顔見世大歌舞伎

 ◇第1部(午前11時開演)「蜘蛛(くも)の絲宿直噺(いとおよづめばなし)」市川猿之助、中村隼人ら。
 ◇第2部(午後1時50分開演)「身替座禅(みがわりざぜん)」尾上菊五郎、河原崎権十郎、市川左団次ら。
 ◇第3部(午後4時45分開演)「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 奥殿」松本白鸚、中村芝翫(しかん)、中村魁春、市川高麗蔵ら。
 ◇第4部(午後7時30分開演)「義経千本桜 川連法眼館(かわつらほうげんやかた)」中村獅童、市川染五郎ら。
 公演は11月1〜26日(6、18日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000・489。

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