<お道具箱 万華鏡>能の羽団扇 根元に細やかな工夫

2020年10月23日 07時22分

羽団扇。左は国立能楽堂、右は宝生能楽堂の所蔵品

 天狗(てんぐ)といえば、羽根の団扇(うちわ)。これが能のお約束だ。空を飛んだり、強い風を起こしたりできる不思議な道具で、羽(は)団扇と呼ばれている。
 能にはなくてはならない道具だが、現在は新調できない状態にある。というのも、羽根の主であるイヌワシやクマタカは、絶滅危惧種に指定されているからだ。貴重品ともいえる羽団扇は、どのように受け継がれているのか。宝生流第二十代宗家・宝生和英(かずふさ)さんに、話を聞いた。
 東京・水道橋の宝生能楽堂をたずねると、和英さんが古めかしい木の箱を準備して待っていてくれた。中には七本の羽団扇。羽根は約四十センチとかなり大きいが、持ち手から外せるので、コンパクトに収納されている。
 いつごろ作られたものかは不明だが、大名が作らせ、能楽師に下賜したものである可能性が高いとのこと。「今は社会構造や自然環境が、お殿様がいたころとは全く違っています。だから、道具づくりも、素材調達の方法や作り方のしくみを変えていく必要がある」と和英さん。その実践も始まっていて、環境保全団体と連携した取り組みも進行中のようだった。
 せっかくなので、羽団扇を組み立てるところを見せてもらった。羽根は、根元に糸がつけられ数珠つなぎになっていた。羽根は一本ずつ形が微妙に異なる。持ち手に差したときに、きれいな形になるように、羽根の並び順を研究してあるのだ。それに糸があれば、万が一、演能中に羽根が折れても、ぽとりと舞台に落ちる心配もない。羽根も美しかったが、根元の細工にもしびれた。
 さて、十二月二十六日に、国立能楽堂で「鞍馬天狗 天狗揃(てんぐぞろい)」が上演される(シテ宝生和英)。八人の天狗とともに、羽団扇も八本登場する。色や柄の異なる羽根にもご注目を。(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

宝生能楽堂の羽団扇。羽根の根元に糸がつけられている

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